第45話 超速レベル上げ

 ※本日2話更新です。

【前話あらすじ】

 新装備を試すためCランクダンジョンに向った咲希。順調に魔物討伐が進み、休憩する。

 再開しようとしたところで、信吾が現れ、経験値稼ぎにいい場所があると騙され、人気のない場所に誘い込まれる。

 卑怯な手段を使う信吾に襲われるが、その咲希はアルスが擬態した姿だった。自分の欲望を満たそうとした愚かな信吾はアルスによって、この世から消えることとなった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 アルスがCランクダンジョンで信吾を吸収した時、真央の体に異変が起こった。

「どうしたの?おにぃ」

 様子のおかしい兄を心配して、明璃が声をかける。

「いや、今、レベルが上がったみたいだ…」

「え?どういう事?」

「多分…咲希に付けていたアルスの分体が経験値を得たんじゃないかな…?」

(アルス…聞こえるか?)

(聞こえるよ〜)

(何かあったのか?)

(んとね〜。咲希おねーちゃんがピンチだったから、つい…)

(そっか。守ってくれたんだな?ありがとな)

(少し試したいことがあるから、また連絡するよ)

(はーい)

 この時の真央はまだ知らなかったが、人間を殺しても経験値は得られるのだ。闇の世界ではその事実を知っている者もおり、人間狩りマンハントによってレベルを上げている裏の人間達も存在している。


「ステータスオープン」

【名前】獅童 真央

【職業】召喚士

【LV】25

【HP】290/290

【SP】430/430

【力】60

【知恵】58

【体力】61

【精神】49

【速さ】57

【運】99

【スキル】

 魔物鑑定、契約、召喚、送還、魔物言語、魔物探知、魂の絆(封印中)

【契約中】

 1/1

【称号】

 帰還者、世界を超えし者、元魔王

「おぉ…レベルが3も上がってる」

「えぇ〜!?なにそれ…ズルい」

 別行動していても経験値は入るって事か…これなら、超速レベル上げが可能になるな…だとすると、あと確かめたいことは…

「なぁ、明璃」

「何よ?」

「パーティーってダンジョンの外でも組めるよな?」

「うん…大体みんな、ダンジョンに入る前にパーティー登録してるからね」

「なら、Dフォン出してくれ。パーティー登録しよう」

「え?ここで?」

「おう」

‘獅童真央からパーティーに誘われました。参加しますかY/N’

「YESっと。はい、オッケー」

「よし、んじゃ、次は…っと、これ着けてくれ」

「何これ?腕輪?」

「あぁ。秘密兵器だ」

「そういや、前にもそんなこと言ってたよね?」

「ふふふっ…この腕輪にはな、取得経験値UPって付与がついているんだ」

「取得経験値UP…?え?えぇぇーーーーーーー!!!そ、そんなの聞いたこともないんだけど…」

「まぁな…これ作るのは苦労したんだぞ」

 取得経験値UPってスキルを持った魔物は向こうの世界で世界の記録アーカイブ内にも存在しなかった。

 ほんっとうに偶然、擬態魔物ミミックを倒した時に、取得した魔物がいたのだ。

 擬態魔物ミミックには、倒したときに発動する、ランダムルーレットというスキルがある。これは自分を倒した相手にランダムで報酬を与えるというスキルだった。その中の当たりの部類に取得経験値UPがあったんだ。

 それを付与が使える魔物が覚えるまで、数えきれない程の擬態魔物ミミックを倒したんだよなぁ…

 とにかくレベルを上げることを最優先にしていたからな、効率を上げるためにできることは何でもやってきたつもりだったし…

「ちょっと?おにぃ?」

 おっと…昔を懐かしんでる場合じゃなかったな。

「着けたな?んじゃ、今から、咲希と一緒にいるアルスの分体に魔物を倒してもらうから、それで明璃にも経験値が入るか実験だ」

「あぁ〜。なるほど。そういうことね。了解〜」

(アルス…聞こえるか?)

(聞こえるよー)

(ちょっと、そっちで魔物倒してくれるか?)

(今、咲希おねーちゃんが休憩中だから、ちょっと待ってて〜)

(お?そうなのか?なら、俺達はギルドで待ってるからな)

(はーい)

 …

 …

「う、うぅ〜ん…あれ?」

「あ!咲希おねーちゃん。起きた?」

「アルスちゃん?はっ!?わたし…眠ってたの?」

「うん。そうみたい。やっぱり疲れてたんだね〜」

(ほんとは安全を確保するために、ボクが眠らせたんだけど…マオー様からは絶対に守れって言われてるしね)

「今、マオー様から連絡があったよ。ギルドで待ってるって」

「そうなのか?なら、私達も戻ろう」

「うん!」

 ダンジョンから出る瞬間、アルスは分裂し、自身の分体をダンジョン内部に残したのだった。

 …

 …

 三人はギルドで合流した。

「よぅ、咲希。新装備はどうだった?」

「あぁ、ビックリするくらい良い装備だったよ」

「え〜っ…サキ姉ばっかりずるいよ…」

「明璃にも、ちゃんと用意してあるからな!期待しとけ」

「ほんとっ?やったぁ!!」

「あ、そうだ。咲希もDフォン出してくれ」

「うん?何かするのか?」

「ああ。ちょっとした実験だ」

‘獅童真央からパーティーに誘われました。参加しますかY/N’

「パーティー登録?」

「そう」

「なんだか…よくわからないけど。YESっと」

「よし、二人共登録したな」

(アルス〜)

(はーい)

(そのダンジョンで無限分裂だ!)

(わかった〜)

(よし!じゃあ魔物を殲滅しろ)

(まっかせてー)

(冒険者に見つかるなよ〜)

(はーい)

「さて、あとは時間を潰すだけだが…」

「あ!咲希さん、真央さん!ちょうどいいところに!」

 俺達が時間の潰し方を考えようとしている時に、冒険者ギルドの女性職員が声をかけてきた。

「どうかしたんですか?」

「はい…私はFランクダンジョンの異変が解消されたかどうかの調査をしてきたところなのですが…」

「なにか問題があったんですか?」

「例の罠部屋モンスターハウスに関しては、スライムの変異種の出現は確認できませんでした」

「それじゃあ…」

「スライムどころか、ダンジョン内のどこにも魔物が出現していないのです…」

「え…?」

「それは、どういうことですか?」

「わかりません…まるでダンジョンが活動を停止してしまったかのような…ダンジョンが現れてから、一度もこのようなことがなかったものですから…」

「そんな…」

「もしかしたら…異変を解消したという真央さんなら何か知っているのではないかと…」

「すいません…ちょっとわからないですね」

「そうでしたか…」

「こっちでも、色々と調べてみます。何かわかったら報告しますよ」

「よろしくお願いします」

(とは言ったものの…今の話だと心当たりがあるんだよなぁ…あの真っ黒い魔石…多分あれは…)

 ギルド職員から明かされた情報から、Fランクダンジョンのアルティメットスライムからドロップした、真っ黒な禍々しい魔石が何なのか、大体の予想がついた真央であったが、そのことは心に秘め、今はアルスの齎す成果を待つことにした。

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