第28話 報告
不本意な疑惑を持たれかけたが、アルスは可愛いっていうのはみんな共感してくれたからな、それでいいだろ?ってことで押し切った。
その後、
「そ、そうだ!真央!あの後、どうやって生きのびたんだ?私はてっきり、真央が死んだと思って…」
「う、うん。あたしもサキ姉にその話を聞いて、何も手につかなくなっちゃって…」
「それで家の中が真っ暗だったのか…心配させてゴメンな」
「ううん。無事に帰ってきてくれたから、もういいの」
「あの時、信吾が撤退するって言って、転移結晶を使ったんだけど、俺は両足が無くなっててな、動けなくて転移範囲に入れなかったんだ」
「ちょっと待って!両足を無くしてたって?」
「あのスライムの攻撃を避けれなくてさ、溶けて無くなっちゃったんだよ」
「でも、今はあるじゃない!なんで?」
「説明するより、見てもらった方が早いか。アルス、出してくれるか?」
「うん。いいよー」
アルスがワンピースの胸元をゴソゴソと探すふりをして、小瓶を取り出す。
「え?これって…
「あっちじゃ、
「私も本物見るのは初めてだけど、多分…」
「
明璃が興奮しているのに、ちょっと引きながら
「ま、まぁ、というわけで、俺の足は元通りに治ったってわけだ」
「それだと、いつアルスちゃんのことを思い出したの?」
「みんなが転移で消えてさ、俺だけ残っただろ?その時はさすがに、俺はここで死ぬのかな?って思ったよ」
その状況を想像したのか、咲希と明璃の顔が悲痛に歪む。
「その時にさ、咲希と明璃の顔が浮かんできて、俺が死んだら二人が悲しむかな…って」
「あたしは、サキ姉の次か…」
呼ばれた名前の順番に気がついた明璃が俺をからかうように笑う。
「う、うるさいな…」
ほら見ろ、咲希の顔が赤くなっちゃったじゃないか!
「父さんも冒険者は諦めたやつから死んでいくから諦めるな!って言ってたろ?」
「それで、自分にできることを考えて、最後に敵の名前くらい見てやるか!って思って、魔物鑑定をしたんだよ」
「そしたら、あいつがアルティメットスライムだってわかってな。アルティメットスライムってどこかで聞いたことがある気がしてさ。頑張って思い出そうとしたら、アルスの声が聞こえたんだ」
「そうだったんだ…」
「俺、ダンジョンに呼ばれてる気がするって言ってただろ?」
「え!?おにぃって…厨二…」
「うっさい!黙って聞け!あれはアルスが俺を呼ぶ声が、あのアルティメットスライムに共鳴して聞こえてたんじゃないかな?って思ってるんだ」
「そっか。真央が直感を信じるって言ってたのが、ホントに正解だったんだね」
「まぁ、その後はアルスを召喚できたからな。アルスがあのアルティメットスライムをちょちょいって倒して、無事部屋から出れたって訳だ」
「ちょちょいって…そんな簡単そうに言わないでよ…あんな化け物がそう簡単に倒せる訳ないでしょ?」
「魔王の時の記憶が戻った今となってはさ、あのアルティメットスライムって、そんなに強い敵じゃないんだよ。」
「あれが強くない?」
「多分、あれは生まれたての初期レベルくらいだと思うんだ」
「あれで、初期レベル…」
「この世界ってさ、レベルの上限っていくつなんだ?」
「それは、まだ確認されてないよ。人類の最高レベル
「ダンジョン出来て3年だったっけ?それでLV65は凄いな」
「ちなみにアルティメットスライムの初期レベルは85だぞ」
「LV85…?そんなの勝てるわけない…」
「あいつ、多分、
「そんな…嘘…」
「
「みんなが転移でいなくなった時、あいつ敵を見失って、奥に引っ込んで行ったんだ。俺はそのおかげで助かったんだけど…まぁ、鑑定をしかけたら、また敵認定されたけどな」
「でも、真央はあれを倒して出てきたんでしょ?」
「倒したのは俺じゃなくて、アルスだけどな」
「アルスちゃんってそんなに強いの?」
「あぁ。言ってなかったけどな、アルスのレベルは999だからな」
「は?え?」
「おにぃ…流石にそれは、嘘…だよね?」
「なんで、お前らに嘘言う必要があるんだよ?まぁ、桁違い過ぎるから、公開する気はないけどな。」
「俺が魔王やってる間に、限界まで育て上げた、最高幹部の一人だぞ?」
「あ〜。めっちゃ分かる気がする…おにぃ、そういうのやり込むの大好きだったもんね…」
「明璃…そんな簡単に納得するような話じゃないだろう?LV999だぞ?」
「サキ姉、おにぃはこういう人だからね。彼女なんだから、慣れていかないと!」
「彼女…」
(うん。そう言われるのも慣れていかないとだよ、サキ姉!)
「それで、部屋を出たあとに緊張から開放されて、夜まで眠ってしまったみたいでさ、帰ってくるのが遅くなっちゃったんだ」
「それであんな時間に帰ってきたんだね。も〜。ほんっとにおにぃのこと、心配したんだから…」
「でも、真央が無事で良かった…」
「そうそう!アルスを召喚して、
「おぉ〜。おめでとう!おにぃ」
「よかったな!真央。それで、いくつになったんだ?LV5か?もっと上がってLV8くらいまで行ったか?」
「ふふふ。LV22だ!」
「「は?」」
「たった1回の戦闘でLVが20も上がるなんて…」
「嘘…おにぃにLV抜かされた…」
どうやら、驚かれるほどの急激なレベルアップだったらしい。
「しかし、困ったことになったな」
「うん?困ったこと?」
「あぁ。私たちは調査に失敗して転移で撤退しただろ?ギルドとしてはまだ未解決のままなんだよ」
「それを俺が解決したなんて話になったら…」
「そうだ。どうやって?って話になるのは間違いない」
そこから、みんなで知恵を出し合って、口裏を合わせることにした。
そして、出来上がったストーリーはこうだ。
残された俺は、部屋の中で
魔物側から請われて契約する場合があるという
証拠として、
ついでに、咲希はチーム
小夜と里奈はまだ秘薬を必要としているので、俺から咲希を引き抜く詫びとしてプレゼントしてほしいとのことだ。
今後の方針を大体決めたので、明日、ギルドへ報告することにしようという話になって、今日は寝ることになった。
ただし、もう遅いので、咲希は家に泊まっていくことに決まった。
明璃が
「おにぃと寝ればいいのに」
なんてからかうので、真っ赤になった咲希に怒られて涙目になっていた。
うん。それはお前が悪い!
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