ハズレ職業の召喚士〜かつての魔王は最強の魔物達を召喚します〜

第27話 告白

　二人が泣き止むまで、俺は二人をずっと抱きしめていた。

「落ち着いたか？」

「う、うん」

「幽霊なんかじゃないぞ？」

　足もちゃんと付いてるよとアピールする。

(あ…そういや、さっきまでは足はなかったな…)

「ね、ねぇ…真央？聞いてもいい？何があったのか…」

「あぁ。もちろんだ。話さなきゃいけないことがたくさんある」

「そうだな…まずは…」

(アルス？家に帰ってきたから呼び出してもいいか？)

(うん、大丈夫！)

「召喚…アルス・グラトニア」

　俺がそう唱えると、床の魔法陣からアルスが現れた。

　アルスを初めて見た二人は…プルプルと震えだして…

「「か、か、可愛い〜〜！！！」」

「お、おにぃ…誰？この子！めっちゃ可愛いんだけど！」

「真央…可愛いからって誘拐は良くないと思うぞ？それとも、こういうちっちゃい子がす、好きなのか？」

「誘拐犯でもロリコンでもないわっ！」

　二人の様子に驚いたアルスは俺の後ろに隠れてしまう。

「マオー様…誰？この人達？」

「俺の妹と幼なじみだ」

「幼なじみ…」

　咲希が心なしか落ち込んでるような気がするが…

「おにぃ…そこは俺の彼女だ！って言わないと…」

「えー…勝手にそんなこと言ったら咲希に迷惑だろう？」

「おにぃ…」

　呆れたような妹の視線が痛い。

「め、迷惑なんかじゃ…ない…のに」

　そう呟いた咲希は顔を赤くして俯いてしまった。

　それを聞いた俺も、無性に照れくさくなって黙り込んでしまう。

「もうっ！しょうがないなぁ…」

　明璃が腰に手を当ててご立腹だ。

「いい！？おにぃ！サキ姉はね、おにぃのことが好きなの！」

「お、おい明璃…何を…」

　明璃の突然の暴露に咲希が動揺している。

「サキ姉もサキ姉だよ！気持ちはちゃんと伝えないと！今日みたいなことになって後悔してからじゃ遅いんだよ？」

「おにぃはサキ姉のこと、どう思ってるの？好きなの？嫌いなの？」

　明璃に言われて、意を決した咲希が口を開く。

「ま、真央…わたしは…お前が…」

　はぁ…全く、何を言わせてるんだ俺は…

　いつもいつも、あの時だって…周りの気持ちをわかったふりして、何もわかってない…覚悟するのが遅いんだ…

「咲希…その先は俺が言うよ」

「俺は咲希のことが好きだ。ずっと一緒にいたいと思ってる。俺の彼女になってくれるか？」

　俺の告白に咲希は…

「うん。うん。嬉しい！」

　桜の花が咲くような満開の笑顔を浮かべて頷くのだった。

「はぁ〜まったく世話の焼ける二人よね。お父さんとお母さんが帰ってきたら報告することが増えたわ」

　明璃もご満悦である。

「マオー様ぁ…お腹空いたー」

　空気を読まないアルスがぶっ込んできた。

「そうだった！おにぃ。この子どうしたの？」

「あー。説明する前に食事にしよう」

「そういえば…私達も…」

「そうだね…まだ何も食べて無かった」

　それから、みんなで食事の支度をして、食卓を囲んだ。

「マオー様。このご飯美味しいね〜。あっちの世界にはなかった味だね」

「これは、カレーって言うんだぞ。あっちじゃ、香辛料はなかなか手に入らなかったからなぁ…って、コラ！皿は食べちゃダメだ！」

「ね、ねぇ、真央。あっちの世界って何？」

　俺は思い出した記憶をどこまで話すべきか悩んでいた。

「信じられない話かもしれないけど、聞いてくれ…」

　俺はかいつまんで話し始めた。

　事故にあって、魂だけが異世界に飛ばされてしまった事。そのため、こっちでは眠ったままになってしまった事。(本当は違うのだが、実際は死んでいたことや神様の話は伏せることにした)

　異世界に飛ばされた俺の魂が魔王になってしまった事。その時に出会ったのがアルスだった事。他にもたくさんの仲間がいた事。

　勇者に倒されてしまったことで、こっちの世界に戻ってこれた事。その時にアルスや仲間も一緒に来てくれた事。それが魂の絆という見えないスキルであり、最初から契約中1/1となっていたのが、アルスのことだった事など。

「異世界…」

「魔王…」

　俺の説明を聞いた二人は、にわかには信じられないとばかりに呟いた。

「だから、言っただろ？信じられない話かもしれないけどって」

「う、ううん！信じる。信じるよ！おにぃは冗談は言うけど、こういう時に嘘は言わないって知ってるから」

「あぁ、わたしも信じるよ！それよりも、今の話だと、アルスちゃんは魔物ってことなのか？」

「ん？あぁ。言ってなかったっけ？そうだぞ。そもそも俺が召喚したんだから疑う余地もないだろ？」

「ねぇ、おにぃ。アルスちゃんは何ていう魔物なの？」

「アルスはアルティメットスライムだ。種族的にはあの罠部屋（スライム道場）にいたやつと同種だな」

「え？あれと同じ魔物なの？どこからどう見たって人間の女の子じゃない！」

「それはアルスの擬態ってスキルだな。アルスが本来の姿に戻ったら、この部屋には入りきらないぞ。咲希もアルティメットスライムを見てるから知ってるだろ？」

「そうじゃなくて！なんで小さな女の子の姿なの？って話よ」

「ねぇ、アルスちゃん。アルスちゃんはどうして今の姿になったの？」

　明璃が直接アルスに質問した。

「んとねー。ボクはね、マオー様がこの姿がいいって思ってくれたから、今の姿になったの」

「可愛いだろ？」

「えへへ〜。ボク可愛いって言われちゃった〜」

「おにぃ？」

「真央…あんた、やっぱり…」

「ロリコ…」

「断じて違う！」

　この疑惑を晴らすのは悪魔の証明だったよ…