第20話 スライム道場
このダンジョンの2階にはそう呼ばれる場所がある。
その部屋は入ると扉が閉まり、中には大量の魔物が湧くという。
ほとんどの初心者冒険者がここでレベル上げを行うため、通称【スライム道場】なんて呼ばれている。
「ここだ。」
信吾の案内でその場所へとやって来た。が、扉は閉まっていた。
「おっと…先客がいたか」
この部屋は入ると扉が閉まるので、冒険者のマナーとして、扉の前で順番待ちをするという光景が見られる。
入ったメンバーにもよるが、平均的な
ちなみに、もし、この部屋の中で力尽きた場合は骨も遺留品も全てスライムに食われるため、何も残らない。まぁ、LV1でも1発で倒せるスライム相手に力尽きる冒険者などいないので、今までにここで事故が起こったことはないのだが。
しばらく待っていると、扉が開いて中から数人の冒険者が出てきた。
「あれっ?信吾先輩じゃないっすか!」
「なんだ。
「そうっすよ。依頼だったんす。この依頼達成で、いよいよ俺らもCランクっすよ」
「そうか。頑張れよ」
「はい!じゃあ、お先に失礼するっす」
彼らは信吾に挨拶をして、帰っていった。
「知り合いか?」
「あぁ、あいつらは俺の後輩でな、
「へぇ〜。若いのに凄いんだな。見たところ高校生くらいじゃないか?」
「確か、お前のとこの妹と同じくらいだったはずだ」
「もうっ!若い若いって…あたし達だってまだ若いじゃないの!爺くさいわね」
咲希のその一言でみんなが笑顔になったので、気持ちを切り替えて、俺達もスライム道場に挑戦することにした。
「まずは全員で入る。覚悟はいいな!」
5人が部屋に入った瞬間、
ガシャンッ!
と扉が閉まった。
「真央っ、やれるところまでやってみろ。こっちでサポートする!」
「わかった」
「咲希は真央が倒しきれなかったやつが後衛に行くのを阻止!」
「ええ!了解!」
「里奈は真央に回復と
「わかりました」
「小夜は魔力溜めといてくれ!」
「任せなさい!」
俺たちが部屋に入ると、部屋中に黒い靄が現れ、それが段々とスライムの形へ変わって行く。こうして、100体のスライムとの戦闘が始まった。
40体ほど倒したところで、
「真央!息があがってるわ。下がって!」
と咲希から指示が出た。
「ま、まだやれる!」
「自分を過信しないで!」
そのすぐ後に、スライムの体当たりをもろに食らった俺はふっ飛ばされた。
「真央っ!里奈、回復お願い」
里奈が俺のそばで癒やしの祈祷を使ってくれた。
「信吾!」
「任せろ!」
倒れた俺の前に信吾が立ち、追撃を防いでくれている。
咲希は近寄ってくるスライムを片っ端から殴って倒していた。
「小夜!あと頼むぞ」
信吾から指示を受けた小夜が魔法を放つ。
「風よ!
50体ほど残っていたスライムたちが、たった1発の魔法で全滅した。
凄い…
それに比べて、俺は…悔しいなぁ…
ガシャーン!
扉が開いた。
「よし、真央。スライムのドロップした魔石で契約してみろ」
「え?スライムで?」
「なんだ?嫌なのか?召喚士は自分で倒さないと契約できないだろ?今のお前はスライムしか倒せないじゃないか」
「それもそうか」
「スライムと契約したら、スライム道場で召喚すれば、今日中にLV2か3にはなれるはずだ」
「わかった。やってみる」
信吾からスライムとの契約を指示されて、試すことにした。
「
魔石を手に持って、スライムに語りかけるように契約と口にした。
「何も起きないぞ?」
「おいおい…嘘だろ?最弱の魔物なんだぞ?」
(俺のステータスに契約中1/1ってのがある…もしかしたら、分母が契約できる最大数なのかも…だったら、俺は魔物と契約できないってことになる…)
「実はな…」
俺のステータスにある表記についてみんなに説明した。
見えないスキルのことは除いて。
「なら、とりあえずはレベルを上げるしかないな」
「そうだな。もしかしたらレベルが上がれば契約枠が増えるのかもしれない」
(LV2になった時に契約枠が増えなかったら…いや、今考えるのはよそう)
ひとまず、俺の契約に関する話はここまでとして、俺達は部屋から出て、今の反省会を行うこととなった。
「で?どうだったよ、初めての
「あ、あぁ。けっこうしんどいな」
「そうだぞ、真央。戦闘が続くと気分が高揚して、自分の状態の判断が甘くなるんだ」
「ランナーズ・ハイみたいなもんか…」
「今だって、危なかっただろう?一つの油断が死に繋がるからな。気をつけるんだ」
「すまない、咲希。助かったよ」
「これくらいは当然だ!」
「信吾も、里奈もありがとうな」
「自分の今の実力をちゃんと理解するんだな。」
「わた、わたしは回復役ですから」
「それに、小夜も。魔法凄かった」
「ふふん。それほどでも…あるけど」
「さて、攻撃職なら、今のでLV2〜3までは行くんだが、
「おう!」
これもダンジョンの不思議だ。
その後は何度か編成を変えてスライム道場に挑戦した。
大体、平均で30〜50体は俺が倒せるので、パーティーを解散し、俺だけはソロというのが一番経験値効率が良さそうだなというのがわかった。
今後の予定として、まずはスライム道場でLV2を目指すことにしようということになった。
「そろそろ、あがるぞ」
「了解だ」
いい時間になったのと、みんなの疲労度を考えて、今日のレベル上げは切り上げることにした。
ダンジョンを出て、無事帰還したことを受付に報告し、解散の流れとなる。
「明日からは、ここに直接集合だ。もし参加できない場合はDフォンで連絡を入れてくれ」
「わかったわ」「わかりました」
「いいわよ」「了解だ」
「俺はギルドに報告と換金に行ってくるからな」
Fランクのクズ魔石とはいえ、放置するわけもなく、ダンジョンではきっちり回収してきたので、信吾が代表して換金してきてくれるそうだ。
「ありがとう、リーダー」
「手間取らせて悪いな」
「気にするな、これでもリーダーだからな」
任せろ!といった感じで、雑務を引き受けてくれた信吾には感謝だな。「じゃあ解散!」
信吾の号令で、その日の探索は終了となった。
「真央、一緒に帰ろうか」
「おう、いいぞ。咲希」
「「ヒューヒュー」」
「そこうるさいぞ!」
顔を赤くした咲希がからかう小夜と里奈に文句を言う。
そして、仲良く帰る二人を憎々しげに見つめている男がいたことに誰も気がつかなかった…
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