第19話 ダンジョンアタック
俺達は装備品や所持品の確認をして、Fランクダンジョンへとやってきた。
このダンジョンは洞窟型で、入り口は門で閉鎖されている。
この門は隣に併設されているビルの中で入場手続きをすることで開放される。
今日のダンジョンアタックについては、基本的にリーダーの信吾が方針を決める。
「よし、じゃあ、まずは手続きを済ませてしまおう」
ビルの中の受付で冒険者
出てきたときにもう一度、提示して無事退去したことが記録に残るのである。
「みんな済ませたな?じゃあ行くぞ!」
信吾を先頭にして、ダンジョンの門を潜った。
「このダンジョンの特性は知ってるか?」
「あぁ。魔物が1匹ずつしか出ないってやつだろ?」
「オーケー。まずは基本中の基本、スライムからやるぞ」
ダンジョンの不思議なところは、
中に入ると、どう考えても別の空間じゃないかと思えることだ。ここの場合、入口の規模から考えても、地下にこれほどの洞窟があるというのはおかしいし、場所によっては、中は広大な草原だったり、火山だったり、雪山だったりするので、異空間説と異世界説が世論を二分している。
この洞窟の通路は2車線道路くらいの幅なので、前衛に盾持ちが1人いれば、前方の魔物の攻撃はほぼ100%防ぐことが可能だ。
「いたぞ」
信吾がスライムを発見した。
「まずは俺が引きつけるから、その後に攻撃してみてくれ」
「了解だ」
「
信吾が魔物の
スライムに意思があるのかはわからないが、信吾の方へと向かってきている。
ピョン!と飛びかかってきたところを、信吾が、盾で受け止めた。
「今だっ!やれっ」
「やぁっ!」
俺は思いっきり力を込めて、槍をスライムに突き刺した。
槍で刺されたスライムはやがて小さな石を残して消滅した。
「思ったよりやるじゃないか、真央」
咲希が俺の挙動を褒めてくれる。
「そうだな。初めてにしては上出来だ。槍使ったことあるのか?」
「目が覚めてから、退院までの間に、少しだけ、父さんと母さんに指導をな…」
「そりゃ、贅沢な教師だな」
Aランク冒険者に教えてもらうことなんて、ほとんどの人は無縁なんだぞと、信吾に教えてもらった。
ダンジョンで魔物を倒すと、魔石を残して、魔物は消滅する。これもダンジョンの不思議の一つだ。
「よし、この調子でどんどん行こう!」
その後も、危なげなく、スライムを数十匹は倒した。
攻撃職の場合、大体スライムなら10匹程度でレベルが2に上がるという。
俺は1/100なので、1000匹倒さないと上がらないってことだ。
さらに、今は5人でパーティーを組んでるので、経験値は分散されるから、実質、5000匹のスライムを倒して、ようやくLV2になる計算である…
そう考えると、パーティーはデメリットしかないようだが、それはここがFランクダンジョンだからであって、複数の魔物が出現するようになれば、殲滅力が求められるようになる。
今日は初日であって、完全にお荷物の俺のために、用心に用心を重ねているだけである。みんなには感謝だ。
「スライムは問題なさそうだな。まだ行けるか?」
「まだ大丈夫だ」
「無理だと思ったらすぐに言うんだぞ」
咲希は心配性だなぁ。
「(ちっ)なら先へ進むぞ」
こうして、俺達は2階層へと進んだ。
「ここにはホーンラビットが出てくる。突進による角攻撃は油断すると体に穴が開くぞ」
「わかった。気をつけるよ」
「まぁ、俺がいるうちは、お前にまで角は届かないけどな!」
信吾が自信アリげにニヤリと笑った。(格の違いってのを見せてやるよ)
結論を言うと、今の俺ではホーンラビットに対処するのは難しそうだということ。
なんせ、動きが全く見えないのだ…あの速さで突進されたら、体に穴が開く自信がある…
それを信吾は容易く受け止めていた。Bランク冒険者って凄いんだなと改めて思い知った。
「今日は俺が止めるから、どんどん攻撃していけ!」
「りょ、了解」
「はぁ、はぁ、はぁ…」
「さすがに疲れたようだな」
「階段付近は安全地帯だ。少し休憩にしよう」
「あぁ、すまないな」
「気にするな…まだLV1なんだ。焦ってもいいことはないぞ」
「が、回復します…ね」
シャンシャンシャン
里奈が片手に鈴を持って、俺の前で舞を始めた。
パーティーメンバー全員に対して、体力(HP)と魔力(SP)、そして疲労の回復効果がある。
戦闘中は味方だけを回復し、一度舞の効果を受けた者に持続回復効果を与えるそうだ。
「ちょっと早いが、ここで昼飯にしようと思う」
「ああ、わかった」「了解」
「いいですよ」「賛成〜」
ダンジョン内で食事をするというのもよくあることだ。
さすがはBランク。全員が
「なんだ、真央。カロリーメ◯トだけか?」
「あぁ。ダンジョン内での飯ってイメージができなくてな、手軽に栄養補給ができるなら、これかな?ってさ、そういうお前だって、なんだ?そのスティック状のやつは?」
「これか?これはカツ丼を棒状にしたものだな」
「え?そんなのあるのか?」
「あぁ。マーケットに色々売ってるぜ。ダンジョンでゆっくり飯なんて食ってる暇ないからな。片手でサクッと食べられるような冒険者食ってのは日々進歩してんだぜ」
信吾とそんな話をしながら腹を満たしてると、咲希が近づいてきた。
「な、なぁ、真央…実はちょっと弁当を作りすぎてしまってな…もし良かったら食べてくれないか?」
と、おにぎりを差し出してきた。
「お?サンキュー。そういや、早起きしたって言ってたもんな、これ作ってたのかぁ」
そんな会話をしていると、女性陣がヒソヒソと話し始めた。
「里奈、これはあれだね」
「そうだね、小夜さん。あれですよ」
そんな会話が聞こえたのか、咲希の顔が赤くなる。
「見てくださいよ、咲希さん真っ赤ですよ」
「すっかり恋する乙女ですなぁ」
「う、う、うるさいぞ!お前ら〜」
「「きゃあ!咲希(さん)が怒ったぁ〜!笑」」
キャピキャピと女性陣は楽しそうである。
「おい!お前ら!いくらFランクダンジョンだからって気を抜きすぎだ!(ちっ)」
「「ごめんなさ〜い」」
「もう休憩は十分か?移動するぞ!」
なんだか、信吾が苛立っているような気がするが…
「おい真央。どうせだから、ゴブリン行ってみるか?」
「ちょっと信吾!さすがにまだ無理よ」
咲希が止める。
「俺達がいるから、怪我もさせないさ。ゴブリンの強さを身をもって知っておくのも悪くない」
この時の俺は、ゴブリンなんてゲームじゃ雑魚だろ?と舐めていた。
俺達は3階層へと降り、ゴブリンを探す。
「いた」
「覚悟はいいな?真央」
「おう!」
「
ゴブリンが信吾に向かってくる。それを盾で受け止める。
「よしっ!突け!」
俺は力いっぱい、槍をゴブリンに向けて突き刺そうとした。
「やあぁぁ!」
ザクッ
「痛っつー」
俺の槍はゴブリンにほんの少しだけ刺さりはしたが、硬い何かに突き刺した反動で俺の手の方がダメージを受けた。ゴブリンにはまったくダメージを与えてないようだ。
これは…無理だ。
「咲希っ!」
「わかったわ!やぁ!」
そんなゴブリンを咲希は全く力んだ様子もなく殴り飛ばした。
たった1発でゴブリンは魔石を残して消滅した…
「すげぇ…」
(咲希をからかうのは…やめよう)
「どうだ?あれがゴブリンだ」
「あぁ…あんなに強いんだな…」
「ゲームとかじゃ雑魚だからな。それで最初にダンジョンが溢れたときはものすごい被害者が出たんだ…」
「そうか…確かにあんなのが大量に出てきたら…」
俺はその状況を想像して、ブルッと震えた。
「焦るな。ちゃんとレベルを上げれば、今の咲希みたいに軽く倒せるようになる」
「わかった」
俺は信吾の忠告を胸に刻んだ。
この時点で、このダンジョンでのレベル上げについての方針を話し合った。
全くダメージを与えられないゴブリンを咲希に倒してもらって、経験値だけもらう方法。
世の中には強い護衛を雇って、そういうレベル上げをする人もいるといる。
まぁ、そういうやつらは戦闘技術がないままレベルだけあがるので、養殖とか寄生なんて言われてバカにされるのだが…
もう一つが、かろうじて倒せるホーンラビットを信吾に守ってもらいながら倒す方法。
そして、最後が
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