第16話 ハズレ職の召喚士
「召喚士がハズレ職だって言うのはギルドで聞いたよ。でも、何でハズレって言われてるのかがわからないんだ…教えてもらえないかな?」
俺は病室に集まった家族と咲希に召喚士について知ってることを教えてもらうことにした。
「真央、レベルアップの仕組みって知ってるかい?」
まず、父さんが口を開いた。
「魔物を倒せばいいんでしょ?」
「そうだけど、ちょっと違うんだ」
「どういうこと?」
「
経験値はその
攻撃職なら、職に対応している武器種で魔物を攻撃することで一番効率よく経験値が得られる。
防御職は敵の攻撃を防いだりすると経験値になる。
回復職は回復魔法とかで人を癒やす行動をすることで経験値が増えるんだと。
で、それ以外…要するに自分に合った行動以外では、通常の1/100くらいしか経験値にならないそうだ。
例えば、剣士が斧を使って魔物を倒しても、経験値は1/100になってしまうので、余程の馬鹿じゃない限りは、自分の職種に沿った武器を装備してるってわけか。
「そうそう。だからあたしは武道家だから、素手か、拳につける武器で近接格闘メインで戦ってるんだよ」
その説明にギルドで聞いた物騒な二つ名が頭をよぎったが、それには触れないでおいた。
魔法も同じで、火魔法使いとか、水魔法使いとかって職業になるので、自分の職業に沿った魔法を使わないと碌な経験値にならないってことか。
「母さんは、炎魔道士だから、炎の魔法を使ってるのよ」
「お母さんは火魔法使いの上位職なんだよ」
と明璃が母さんの職について補足してくれる。
攻撃職はわかりやすいが、回復職みたいに攻撃力がほとんどない職業についた場合は魔物が倒せないので、回復職は回復で経験値を稼いでね。って話になる。
じゃあ、召喚士はどうなのか?という話になるんだけど、
「召喚士はね、魔物と契約して、召喚した魔物を使役することで経験値になるのよ」
そう説明してくれたのは母さんだ。
「つまり、強い魔物と契約できれば、召喚士はハズレなんて言われないってことでしょ?」
「それが、なかなか難しいのよね…」
母さんが俺の提案に難色を示す。
「召喚士の契約方法ってわかるかしら?」
「う〜ん…知らない…」
「召喚士はね、自分で倒した魔物の魂と契約を結ぶって言われてるわ」
「それなら、仲間に瀕死まで削ってもらって、トドメだけ刺すってのじゃダメなの?」
「契約する魔物が、この人は自分の主だって認めないとダメなのよ」
「なるほど…なら、トドメを刺すだけじゃ、契約には失敗しちゃうってことか…」
「そうね。だから、召喚士はまず自分自身が強くならないとダメなの」
「でも、召喚した魔物を使わないと、ほとんど経験値が得られないんでしょ…」
「そうよ。だから、まず、最初の魔物と契約する時点で不利なのよ」
なるほど…要するに召喚士としてのスタート地点に立つまで、1/100の経験値で頑張ってレベル上げしないといけないのか…
「だから、さっきもギルドで言ったけど、わたしがサポートするよって話になるわけ」
と、咲希が最初の関門を超える手伝いを申し出てくれた。
「そう。咲希ちゃんが手伝ってくれるなら、お母さんも安心だわ」
と、冒険者になることを頑なに反対していた母さんも少しだけ、態度を緩めてくれた。
「本当なら父さん達がカバーしてやりたいんだけどな」
「ちょっと面倒な依頼を頼まれちゃったのよねぇ…」
「お父さんもお母さんも、Aランクだもんね…国からの依頼?」
「あぁ…ちょっと断れなくてなぁ…」
と、爆弾発言が飛び込んてきた。
「ちょ、ちょっと待って!父さんと母さんはAランクなの?」
「そうだよ。真央を助けたくて、必死でな。がむしゃらにやってたら、ランクもレベルも上がってしまったんだよなぁ」
「俺はもう大丈夫だから、これからはあんまり無茶なことしないでよね」
俺のためにしてくれたことは、すごく嬉しいけど、今後はあんまり心配なことはしないでほしいな。
「まぁ、父さん達の話はまた今度にしよう。今は召喚士についての話だっただろ?」
「そ、そうだね」
聞きたいことは山ほどあるが、まずは自分のことを知らないとな。
「レベルアップのこともそうなんだけど、召喚士には、もう一つ、ハズレって言われる問題があるんだよ!」
と明璃が話に加わってきた。
「おにぃ、
「まぁ、なんとなくはわかるよ」
「
「やっぱり最初のハードルが高いのか?」
「ううん。従魔士は生きてる魔物と契約するから、契約が失敗しても、契約を試みるって行動を取れば経験値になるから、召喚士ほどきつくはないよ」
「召喚士は倒してから契約だから、そもそも倒せないとダメってことか…」
「そう。そこが問題なの!」
「経験値1/100で頑張らないといけないからだろ?」
「違うのよ。従魔士は生きてる魔物を従えるから、従魔士の魔物は戦闘を重ねることでレベルアップするんだよ」
「ってことは…もしかして…」
「そうよ。召喚士は倒した魔物の魂との契約だから、契約した魔物は、倒された時点の強さから成長することがないの」
つまりは、召喚士ってのは、自分が倒した魔物(自分より弱い魔物)としか契約、召喚ができなくて、その魔物は自分より弱いまま強くなることもないってことか…
「ならさ、弱い魔物でもたくさん召喚して、物量で押すってのはダメなのか?」
「それも無理ね。召喚士は1体しか魔物の召喚ができないのよ」
「1体だけ?なるほどなぁ…そりゃ、ハズレって言われるわけだ…」
「従魔士の場合はレベルが上がることで使役できる魔物数が増えるって聞いたことがあるけど…」
「召喚士でレベル上げたやつの例がないからわからないってことか…」
「それでも、回復や支援系の魔物と契約できれば、まだ冒険者としての需要もあるんだけどね…それでも本職に比べたら見劣りしちゃうし。」
「いや、明璃…そもそも回復や支援ができるような魔物は低ランクダンジョンには出てこないぞ?」
「あっ!そっか…お父さんの言う通りだね」
う〜ん…聞けば聞くほど、確かに厳しいって気がしてくるな…
「ものすっごく、希少な例として、魔物側から、請われて契約を持ちかけられるって事例もあるらしいんだけど…」
「え?そんなことあるのか?」
「そもそも、召喚士で冒険者続けてる人がほとんどいないから、眉唾ものの噂話レベルだよ」
「でも、冒険者やってる人が全くいないってわけじゃないんだろ?」
「そういう人は大概、
「おにぃはどんな
「それって、どうやって確認するんだ?」
「え?冒険者ギルドで説明してもらったでしょ?」
「いや、ほら、俺って説明書とか読まないタイプだから…」
みんなから呆れたような視線を向けられた…
「真央、情報は冒険者にとって大切なものだ。それを疎かにするやつは早死するぞ。肝に銘じておいたほうがいい」
父さんが、真面目な顔をして注意をしてくれた。
「うん…ごめん父さん。ちょっと浮かれてたみたいだ。気をつけるよ…」
そう答えると、安心してくれたようで、笑顔を浮かべながら、俺の頭をくしゃくしゃくしゃっと撫でてくれた。
そんな俺達のやりとりを見ていた明璃がやり方を教えてくれる。
「もぅ〜。おにぃはしょうがないなぁ…冒険者
「これか?」
と、ポケットに入れておいた物を取り出す。
「そうそう。それを握って、ステータスオープンって言ってみて」
「お〜。なんだかゲームみたいだな」
「いいから!早く!」
「わかったよ…ステータスオープン!」
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