第14話 冒険者ギルド
「もうっ!サキ姉が本気で殴ったら、一般人のおにぃは死んじゃうよ!」
「いや…すまん…つい…」
「ついじゃありません!」
プイッと横を向いて怒ってますよアピールをする明璃。
「そもそも、明璃が余計なことを言うから…だなぁ…」
「だって、おにぃは鈍感なんだから…あれくらいはっきり言わないと気づかないもん!」
ピキリッ
「っことは…あれはワザとか」
「あっ!」
自分の失言に気がついたときは、もう明璃は咲希に捕まっていた。
「キャアァァ!痛い痛い!」
明璃のこめかみを咲希が両拳でグリグリしている…
「お前ら…人のベッドの側で何やってんだ?」
「あ、おにぃが起きた!」
「あぁ、すまんな。起こしてしまったか…明璃とちょっとしたスキンシップを取っていただけだ」
「まぁ、仲がいいのはわかったよ」
明璃と咲希がまるで姉妹みたいに感じるな。俺が寝てる間、いつもこんな感じだったんだろうか?
「ところで、咲希。さっきの話だけどさ…」
(さっきの話ってどれのこと?もう恥ずかしくてまともに真央の顔が見れないんだけど…)
「冒険者って俺にもなれるのかな?」
「へ?あ、あぁ!なれると思うぞ」
(くぅ〜!勘違いしていた自分を殴ってやりたい!)
「冒険者ギルドってとこに行って、鑑定ってのをしてもらえばいいんだよな?」
「あ、あぁ。そうだぞ。レベルが上がれば身体能力も上がるからな。世の中には冒険者にはならなくても、登録だけはするって人は結構多いんだ」
「そうなのか?」
「全ての人に冒険者としての適性があるわけじゃないからな」
「なるほどな」
「もし良かったら、わたしが案内してやろうか?」
(こら明璃!そこでニヤニヤするんじゃない!後でグリグリだな。)
「お?いいのか?なら、頼むよ」
「なら、いつにしよっか?」
「う〜ん…そうだなぁ…俺はいつでもいいんだけど…」
「なら、今から行ってみるか?鑑定だけなら、そんなに時間かからないと思うよ」
「いいのか?咲希はそんな格好してるから、この後ダンジョンに行く予定とかあったんじゃないのか?」
「まぁ、最初はそのつもりだったんだけどさ、真央が目を覚ましたって、明璃から連絡があったからな、今日の予定はキャンセルしたんだよ」
「お、おぅ。そっか」
(さっきの話を聞いてそんな事言われると、なんだか照れくさいぞ…)
ちょっと気を逸らすか…
「明璃はどうする?」
「あたしはパス〜」
両手をバッテンにし、不参加を表現している。
(お邪魔虫は退散しますよ〜だ)
「ところで、咲希。冒険者ギルドって、どこにあるんだ?」
「あぁ、このすぐ近くだよ」
「そもそも、ダンジョン関連は国が主導で動いてるからな。この病院もそうだし」
「そうなのか?その割にはここで咲希みたいな格好した人を見たことはないけど…」
「まぁ、冒険者に怪我はつきものだけどな、
「まぁ、とにかく。ダンジョン庁なんてのができたくらいだしな。関連施設は近い区域内にあるんだよ」
ダンジョン庁ってのは、ダンジョンの管理、
ダンジョン大臣なんてのもいるみたいだしな…
まぁ、一般人にとってはまず接点なんてない雲の上の人達だな。
そんな説明をされながら、病院の先生に外出許可を申請した。
「オッケー。待たせたな、咲希!外出許可もらってきたぞ」
「じゃあ、行こうか」
二人で並んで歩き出す。
(そこっ!手くらい繋ぎなさいよ!馬鹿おにぃ!)
明璃は二人をこっそり見守っていた。
「ここが冒険者ギルドか…なんか普通のビルだな」
「どんなのを想像してたんだよ…」
「いや、ほら、こう…ウエスタン風のスイングドアがあってさ、酒場が併設してあって、ガラの悪いのが昼間っから酒飲んでるとかさ…」
「ラノベの読み過ぎだな!さ、入るぞ」
「お、おぅ!」
ビルの中も普通の役所みたいな感じだなぁと周りをキョロキョロしていると、
「あんまり、キョロキョロするな。恥ずかしいだろ」
と、咲希に注意された。
だが、同時に、自分たちも周りの人達からの注目を浴びていることに気づいた。
(そうか…咲希ってBランクだって言ってたもんな、ここでは有名人なのかも…)
「お、おい…あれ見ろよ」
「撲殺天使が男連れてるぞ…」
「うわ…ほんとだ…もしかして、あれが例の奴か…?」
(妙な呼び名が聞こえたぞ…)
「な、なぁ、咲希。今のって…」
「聞こえないなー」
「いや、でも今、確かに、撲殺天使…」
「はっはっはっ!真央、初めての冒険者ギルドで緊張でもしてるのか?」
(あ…この笑顔は触れちゃいけないやつだ…)
「いえ、気の所為でした!」
「だろ?」
(今、撲殺天使って言ったやつ!顔は覚えたからなっ!)
「ひぃっ…」
(今、あっちの方で悲鳴が聞こえたんだけど…いや、気の所為だ。うん。これ以上は考えちゃダメだ)
そんなやり取りがあったけど、とりあえず、俺は咲希の後を着いて行く。そして、受付と書かれたカウンターの前まで連れてこられた。
受付には統一された制服を着た女性達が忙しそうに動いていて、咲希はその中の一人に声をかけた。
「今空いてるだろうか?こいつの鑑定をお願いしたいんだけど」
「あら、咲希さん!その方は…?」
「あぁ、わたしの幼なじみでな。まだ鑑定を受けたことがないって言うから連れてきたんだ」
「あぁ!もしかして…例の…」
「い、いいだろ…それは…別に…」
「ふふっ。わかりました。では、こちらの用紙に住所、氏名、生年月日を記入してもらえますか?」
どうやら、顔なじみらしい。さすがBランク冒険者ってところか。
「あ、はい。わかりました」
渡された用紙に記入する。
「え…っと、これでいいですか?」
「確認しますね…」
用紙を上から順にサーッと目で追っていく受付のお姉さんに慣れたもんだなぁと感心していたら、確認が終わったらしい。
「あっ、はい。こちらで大丈夫です。準備ができたらお呼びしますので、あちらの席で少々お待ち下さい」
言われた通り、椅子に腰をかけて待つことにする。
しばらくすると、名前を呼ばれたので、俺だけ別室に移動した。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
その頃、ギルドのロビーでは…
「あれ?咲希?咲希じゃないか!」
鎧を着た男が咲希に話しかけてきた。
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