第6話 永遠のーー
幾度となく私は永遠を願った。しかしそれが叶うことはついぞ無かった。私がいない永遠でさえも訪れることはなかった。
だがそれはきっとこれからも訪れないとはいいがたいものだ。結局私は変われたわけでもなく、ただ弱い私のままだった。
弱い私を私は知ったのだ。今まで目を背け続けてきた自分自身をちゃんとみたのだ。
朝起きて私は顔を洗った。少し目が腫れている気がした。鏡の中を覗くとそこには醜い姿の私が映っている。結局のところ、心の中にいた幼き私は幻想なのだ。きっと本当はこんなにもいい大人が醜く脇な目いているだけに過ぎなかったのだ。
「……。」
それを私はこれから少しずつ周囲に晒さなくてはいけない。私は弱いのだと皆に知ってもらわなければならない。それはきっと勇気のいることだろう。でも少しずつでいい。私は少しずつ変わるのだ。
心には二つある。ありのままの自分とそれを制御する自分。そのどちらも確かに自分で、私のその片方は臆病だった。しかしだ、私はこれからきっと彼を勇気あるものに変えられるのだと信じたい。
誰かの言葉だ。夏休みは終わりがあるのだからいいのだと。私はその意味をすでに知っている。終わりなき毎日の苦痛とそれでも先にある絶望を抱えることがどれほど辛いものかを身をもって知った。
4月になった。周囲の人は新生活やらなにやらで忙しくなるのだろう。桜が散った今、皆が希望を抱えて居るだろう。
テレビを見る。そこに映るのはきっと人間に違いない。積み重ねた努力の上でそこに立っているのだろう。
「……。」
今私がいる場所は皆よりはるか後ろにいる。ただ依然と違うと感じるのは、後ろを向かず前を向いているという点にある。
世界が変わった音などしない。ただいつものように時計の針が動く音が聞こえる。それはいつも、私がどんな状況になろうとも、私がどんなに願おうとも拒もうとも、針はいつも一定に動いているだけに過ぎない。
また、今日が始まる。
除籍になった。それを少しずつ誰かに伝えていく。一人ずつ、少しずつ。重ねた嘘を全てはがすのはどれくらい時間がかかるだろうか。いつ私は誰かに私を見せることが出来るだろうか。
わからない。
でもそれでいい。
私の中の時間が動き出している。過去に囚われ止まった時計が動き出したのだ。
いつかでいい。私が『大人』になったら。きっとそこが夢の続きであることを切に願う。誰かに誇れる私であることを願う。
私の夢は前よりは霞んでしまった。でも確かにそこにある。
今頃みんななにをしているのだろうか。何になっているのだろうか。私は今、ようやく一歩を踏み出した気がする。はるか遠く、あなた達の姿が見えない場所で。
「……。」
また、いつも通り。あまり変わらぬ今日を過ごす。
弱き私は明日を目指して今日を過ごす。
「……。」
きっとこの話はグッドエンディングにはなりえない。私はまだ弱いままで、状況は変わらないからだ。それが未来になれば変わるかさえも分からない。かといってバッドエンディングというのも私は気に入らない。私はまだ終わってなどいないからだ。
『エンディング』や『終』の文字は似合わない。
だから『バッド』と。その文字だけで十分だろう。
だがその前にだ。
この話は断じてフィクションである。そう言おう。その一言がなければ私は私でいられない。
「……よし」
もはや私は永遠を求めてなどいなかった。
~BAD~
今日という日が永遠に 物書きの隠れ家 @tiisana-eiyu
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