第4話 絶望
もうループしない。だから俺はこのパレードを楽しんだ。遠くの村から参加したかつての仲間たちの姿も垣間見る。レクノール、クリスティーナ、ヘーゲル……。誰も死なない世界に連れてくることが出来た。
そうしんじた。
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しんじてたんだ。
「俺も魔王退治に手を貸そう」
だから俺はあの時笑って魔王を斬ったんだ。
「パーティーには魔法使いが必須なのよ」
もう終わりだと、、、、思ったんだ。
「言っておくが助けられたからじゃないぜ。俺が強くなるために俺はあんたらについていくことに決めたんだ」
………………………気づいたのだ。魔王の言う通り世界の主がいたとして、そいつは俺をとことん解放するつもりはないらしい。きっと俺の苦痛を見て楽しんでいるに違いない。
「うそつき野郎」
勇者は魔王にそう言い放った。魔王はすでに巨体からすでに脱皮して真の姿で出迎えて待っていた。そして勇者の発言を聞き苦笑した。
「どうやら世界の主は飽きなかったらしい。理由はどうあれ嬉しい誤算だ」
「…今回はちっさい姿からなんだな」
「ああ。もはや隠す必要もないだろう。貴様との力の差を知ってはなおさらな。意味のないことはもうやらないのさ」
「その割には逃げ出さないんだな。敵わない相手なら逃げ出せばいいじゃないか。それともやられるの前提でもまだ戦闘は楽しいドMだったのか」
「…………。」
小さき魔王はそれに答えるのに躊躇した。自分のデカい抜け殻を触り、勇者が連れているパーティーを見回した。格闘家、魔法使い、剣士。もはや勇者抜きでも魔王が敵う相手ではなくなっただろう。
「…貴様にはわからんだろうな。私の無力さを」
レクノール達は会話の意味を分からずライモンに何事かと問い詰めている。勇者はそれを軽くあしらう。
「逃げる事なら私も逃げたいさ。でもそれは出来ない。勇者よ、この前この世界は一定の物事に沿って成り立っていると話しただろう」
「それがどうした」
「言ったはずだ。貴様と私が最後に戦うと。それが決まっている以上私がここから動くことは許されないのだ」
「動いたらどうなる」
「…だからそれは出来ないといってるんだ」
「……。」
勇者は魔王のセリフに違和感を感じた。
「いま動くことは出来るだろう。空を飛ぶことだってできるはずだ。そのまま逃げ去ることだってできるはずだろう」
「何度も言わせるな。これは運命なのだ。戦う、それを逃れる術はない」
「…違うな魔王。あんたの出来ないはなにか理由があるからだ。出来はするがそれをすると良からぬことが起こるんだろう」
「ほぅ、例えばなんだ? その良からぬことというのは」
「世界が壊れるんだろう?」
勇者はそういった。どうやら図星らしく魔王の目つきが変わった。
「………少ししゃべり過ぎたらしい」
魔王は後悔するようにそう言葉を吐いた。
なんとなく分かっていた。俺が目指すループの果て、それは紛れもなくこの世界が終わってしまうことに変わりえない。
「それを知ってなお、貴様はどうするというのだ」
なんとなくが確信になった今、問いただされる決断。そんなものなくとも勇者の心は変わらなかった。
「もちろん、破滅を選ぶね」
「愚か者が」
勇者は剣を持つ、と同時にレクノール達も構えた。
「だがどうする。貴様が知ったのは世界を壊すとこが出来るということだけだ。その方法までもはしらないだろう。まさか私に土下座してこの場から立ち去ってくださいとでもいうつもりか?」
「まさか。力尽くでしたところでそれは戦闘そのものにかわりないだろ。なら別の方法でさせてもらうだけさ」
そういうと勇者は剣を投げ捨てた。
「「!!」」
驚く仲間。魔王はそれをじっと見つめている。
「運命なんだろ。お前と俺が戦うのは。その運命ってやつに反したとき世界はきっと壊れる。なら戦わない。お前が俺をさっさと殺しちゃえばいいんだよ」
「なにやってんだ!」レクノールが叫ぶ。
「もういい! 俺がいくぜ!」しびれを切らしてヘーゲルが突撃する。
魔王とヘーゲルが激突しあう。ヘーゲルの剣の猛攻を魔王は手ではじき返す。火花が舞っている。
「どうしたんだライモン。魔王はもう目の前なんだぞ。あいつを倒せば世界に平和が訪れる。わかるだろう。皆の悲願だ!」
「ライモン。魔王になにか言われたんでしょう。あいつの言葉に惑わされないで。私たちがついてるじゃない」
「くっ!」ヘーゲルが引いて戻ってくる。
それでも俺は戦う意思を見せない。
「哀れだな」魔王は呟いた。
「言ったはずだ。これは運命なのだと。貴様は自分を自分の意志で動かしていると勘違いしている。悲しいことだ」
「? なに言ってるかわからんぞ。俺はただもうお前と戦うつもりがないだけだ」
「…万に一つそれが叶ったとして、ただ貴様は私に殺され教会に戻るだけだ」
「それでも俺はお前ともう戦わない。運命が戦えっていうなら俺はそれに逆らってやる」
魔王がため息を吐いた。
「じゃあどうして貴様は剣を持っている」
「え……っ!」
俺は見た。自分の右手を。そこには確かに捨てたはずの剣がそこにはあった。
レクノール、お前たちが拾ったのか? と仲間をみるも、ただ勇者が放った戦わない宣言に文句をいいそれどころではなさそうだった。
「じゃあどうして貴様は剣を構えている」
魔王がいった。俺にもわからなかった。俺は自分の意思とは反して魔王に剣を向けていた。そして体が勝手に魔王の方へ走り出す。
「どうなってんだ!」
そういいながら勇者は魔王に剣を振り下ろした。
「言っただろう。運命なのだと」
魔王が剣を受け止め不敵に笑った。
「私は自由に動ける。しかし世界の崩壊を考えるとそれは出来ない。貴様は逆だ。貴様は自由に動いてきた、つもりでも実際そうではない。貴様はただ誰かに操られてここまで来たにすぎん」
「わからねぇよ! 誰に! 操られてるってんだ!」
魔王は空に指を指した。
「この世界の主だよ」
「っ! またか! またその誰か分かんねぇくそ野郎にいいようにされてるっていうのかよ!」
勇者は悲痛な声を出しながら魔王を攻撃する。
「目が覚めたかライモン!」
仲間たちも攻撃に参加する。
それから数分後、願わぬことに小さき魔王は勇者たちに倒された。
「くそったれがああああ!!!!」
喜ぶ仲間が引くほどに、勇者は怒鳴っていた。
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