第4話 一歩


 「告白しちゃいなよ」


 いつからか限界だった。


 「なんで? 意味ないのに」


 突如として私の口から言葉が溢れた。愛美は予想してなかったそのセリフに驚き困惑を見せた。


 「意味ないってどうしたの? 今日だっていい感じに喋れてたじゃない」


 だって何を言うかわかっていたんだもん。


 「なにかあったの?」


 ループしてるんだよ。


 「絶対成功するって。心配いらないよ。あいつの幼馴染の私が言うんだから間違いない、奴は絶対おっけーするって」


 「……。」


 ねぇ、私は気付いたんだよ。いくら私が彼に近づいたところでまた今日が始まるんでしょう。どんなに近づいても意味がないんでしょう。


 「おーけー貰えるかな」


 「うん、絶対。私を信じてみなさい」


 「それ、ループする前に聞きたかったな」


 「え、なんて?」


 聞き返したその言葉に私は答えることなく逃げるようにその場を離れた。愛美が呼んでいる声が背中に当たる。でも、手遅れだ。


 家に帰り、スマホにいくつもの着信がはいっていることに気づいた。しばらく放っておく。すると追加でメッセージが表示された。


 『悩み事ならのるぞ』

 『遠足楽しみにしてるからさ。そこでワンチャンスあるかもよ』


 「遠足はこないんだよ!」


 はっと我に返る。無意識に声を荒げて叫んでいた。なにかあったのかと親が呼ぶ。何もないと返事を返しベットに横たわった。


 窓から月が見える。私は心の中で祈った。もう充分です。たくさんです。明日をください。ずっと変わらない関係はもう嫌です。


 目を閉じる。今日が終わる。


 そして、、、、、


 私は目が覚めて真っ先にスマホを確認した。


 『7月2日』


 また今日が始まった。


 また。


 「ははは………あれ?」


 頬を拭うといつの間にか濡れている。無意識だった。


 また皆で買い物をする今日。中村君は私をただのクラスメイトにしか思っていないだろう。また友達になるためにはたくさん話題を振らなきゃいけないな。ポニテにしたら学校とは雰囲気変わるって言ってくれたな、はは。


 またなんでもない関係からか。


 ……いやだ!!!!!!!!


 この時私の中で何かがはじけた。とっさに愛美に電話をかける。


 『おう、舞? どうしたの? まさか着ていく服に悩んでるとか言わないでよ。さすがにコーディネートまでは手伝ってあげ』

 「助けて!!お願い!!」


 電話に向かって叫んでいた。


 『え、どしたの?』


 突然なにを言っているか理解できないだろう。それでも私は全部を話した。今まで今日を繰り返していること。その全てを。


 『ばかにしてるの?』


 はじめは信じるはずもなかった。だけど私は繰り返し話す。


 『確かに奈々とコンビニで待ち合わせしてるけど、なんで知ってるの?』


 少しずつ、少しずつ信じてもらう。


 「それから今日着ていこうとしている服は白のブラウスに黄色のタックパンツ、それと黒白の鞄!」


 『……。』


 無理にでも信じてもらう。


 そして私は愛美と合流する予定の2時より前の11時に会うことになった。愛美を見た瞬間私はたまらず駆け寄った。愛美はまだわけわからず困った顔をしていた。


 それからお昼を済ませるついでに先に行く予定だったお店のフードコートの席に着いた。そこでまた愛美に自分の起きている状況を一から説明した。


 「なるほどね。理解しがたいけど、私の服装を全部当てられたら納得せざるえないわね」


 それから愛美はひとつの案を出した。


 「告白しちゃいなよ」


 「え!? なにいってんのさ」


 何度も聞いたセリフではあるが突拍子もないタイミングで面をやられる。でも愛美の顔は真剣だった。


 「真面目にだよ。だってもし仮に今日みたいな日が続けばいいな、っていう願いが叶ったとするよ。それって中村君と話せた時間、その距離を保っていたいって想いから来ているんだよ」


 「というと?」


 「つまり、願いは中村君との変わらない関係を叶えているわけ。ならさ、逆にこっちからその関係を変えちゃえばいいじゃない。そしたら今日みたいな日、っていうのが特別な日になって願いが無効になるんじゃない?」


 「えっと、私が中村君に」


 「そう、告白して彼氏になればいいのよ。題して、告白大作戦!」


 「それただの告白じゃん!」


 なんてめちゃくちゃな。でも私一人だったらずっとなにも出来ずにループを諦め受け入れていたかもしれない。ありがとう、愛美。相談して良かった。


 「いいからいいから、どうせ失敗しても今日を繰り返すんでしょう? 無敵じゃない」


 「その、断られたら?」


 「そっちの心配はいらないわよ。あいつの幼馴染の私が言うんだから間違いない、誠は絶対おっけーするって」


 聞き覚えのある言葉を愛美は言った。




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