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その後、私は今の家族とともに他国で暮らしはじめた。


鍛冶職人として働きながら、休みの日は絵を描いている。





今日はとても晴れているから、良い絵が描けそうだ。





丘の下に広がる町を眺めながら、キャンパスに描いていく。









あれから、彼女はどこに行ったのかは分からない。


もしかするとまだ近くに――






そう思って探してはみたものの、見つからなかった。



だけど、これで良かったのだ。




彼女から生まれ故郷を奪ってしまった私に、会う資格はもうないのだから。




ただ彼女に願うことは




幸せになってほしいということ








  また今度、絵を見せてくださいね







風にのって彼女の声が聞こえた、ような気がした。









絵が一段落終わり、ふと顔を見上げた。



空の青さ 頬を伝ったのは

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汽車に乗りあてもない旅に出かけた。それは生まれ過ごした国への―――――――― @usershousetukakuyom

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