6

数日後、仕事から帰る途中だった。


突然、背後から何か鈍器のようなもので叩かれ気を失った。






気がつくと大きな円形の広間にいた。

手錠が後ろ手にかけられていた。



「起きたか」



少し離れた先


椅子に、玉座に座る国王がいた。




ここは王宮の中?




「どうして……?」


「君の魔力だよね? あの青い光は。誰かの魔力を判定していたんだよね?」



「なぜ……」


なぜ知ってる?


「君が使った魔法の光について報告を受けた時、昔見た光に似てるなと思ってね」


国王は立ち上がった。そしてこちらのほうに向かって歩き出した。





「その光はある男がみせてくれたんだ」


そして私の目の前で立ち止まった。



「時計職人だったかな、まぁそれは表向きの職業で、魔力判定師として父さんのもとで働いていたんだ」











まさか


「で、自分の魔力が知りたくてその男を城に呼んで、判定させたよ。だけどあの男、恐れ多くも王太子の私に魔力はないなんて言いやがったんだ」















「王家の私が魔力を持ってないわけがない。むかついたからその場で斬り殺したよ」















「それで、あの男の家族も殺すよう兵に命じた――」

「なぜ家族も、家族も殺したんですか?」


思わず聞いてしまった。


すると国王は後ろを振り向き、先ほどまで座っていた玉座の方を見た。


「父さんの名を使って人を城に呼ぶことはまずかったからね……」


そしてこちらに顔を戻した。その顔は


「それに父さん、あの男を信頼してた。だから家族全員行方不明という形にすれば都合がよかったんだ」


微笑んでいた。






「昔話もここまでにしておこう」




父と母を殺したのは






「今日、ここに君を連れてきたのには」




今、目のまえにいるやつ





「二つ理由がある、まずは」




許せない




「君が判定したのは誰だ?」







許せない、絶対に、許せない。許せるはずがない。











「どうした? 答えられないのか?」





だけど



「いえ、旅の方です。今はどこにいるのか……」


「嘘をつくな! 君の妻だろ? それは調べがついてる! で、その妻はどこにいる?」







だけど



「彼女は……」



落ち着け



「彼女は今出かけてます。場所は分かりません」



「探して捕まえろ」




息がつまった。息がつまりながらも冷静に抵抗を試みた。


「彼女は、彼女の魔力は人を傷つけるものじゃないです!」


「そんなことはどうでも良いんだ」


「……え?」


「魔力を持つ者は皆、殺す。本来なら君も殺すことになるけど、魔力判定師は必要だからね。つまり、君はこれから私のために働くんだ」




「もし……私が断ると言えば?」


「その時はためらわず、君を殺す。だけど、それだけじゃ済まないよ」


国王は広間の端にある窓のほうに目線を向けた。



「だって、君の父と母が今どこに住んでいるのか、もう分かってるからね」







その時、私はどんな顔をしてただろうか。


押さえきれない、気持ち。



〈お前の言うことなんて聞くか。お前は……私の父と母を殺した! 判定が気に食わなくて殺した? 家族全員行方不明の形にしたくて殺した? ふざけるな! ……殺す、今いる大切な人達のためにもお前を絶対殺してやる!〉






そんなことを叫べば良かったのだろうか。


だけど私はこの時、ぎりぎりのところで


本当にぎりぎりのところで冷静になれた。



これも彼女の魔力のおかげだったと思う。



「分かりました」


「よし、明日兵とともに出発せよ 。三日以内に見つけ出せ」




その後


王宮を出た。



しばらく道を歩き、そこで立ち止まった。





雨が降っていた。



髪の毛がずぶ濡れになった。




地面に水溜まりができ、そこに自分の顔が映った。




顔をあげ、前を向いた。


そして


走り出した。



あの日のように走った。



向かった先は、長老の家だった。

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