第38話 失踪
夜が明けて、外が騒がしい。カラスのだみ声が聞こえ、シャッターに何やらぶつかる音がする。目が覚めた毬は横になったままでケージのナナに声を掛けた。
「ナナ、大丈夫よ。カラスは外だから。シャッター閉めてるから入って来れないよ」
ふう、もうちょっと寝よ。目を瞑った毬だったが何か違和感を感じた。枕から頭を上げる。
「ナナ?」
静かだ。毬は上半身を起こしケージを見る。 え? いない? 毬は立ち上がった。
「ナナ? どこ?」
ケージは空っぽで、毬は部屋を見回す。ナナは自分でケージを抜け出せる。以前もカラスが来た時、そうだった。
もしかして外に出たの? どこから? 毬はまた部屋をぐるりと見回す。窓もサッシも閉まっているし、シャッターだって閉まっている。じゃあ、どうやって…。 あ、 エアコン?
毬は以前、父の徹がエアコンの中を覗いて、ドレンホースに繋がってると言ったのを思い出した。エアコンの吹き出し口からドレンホースに入ると、ドレンホースはそのままベランダから突き出している。お父さんがエアコンの中を覗いていた時、あの時、ナナもそこで一緒に見ていた。お父さん、リスだって入って来られるとか言ってた。それなら小鳥も出て行けるんじゃ…。
ナナ、外へ行きたかったの? そこら辺で遊んでいたらいいんだけど。
毬はシャッターを開けてみた。窓から外を見透かすが、鳥らしきは見えない。サッシを開け、パジャマのままでベランダに出てみる。すると、シャッターのすぐ下に…
青と白の羽が散らばっていた。
!! … 「ナナッ!」
ベランダから叫ぶ。もしや、ナナは外に出たくて、出てみたらカラスに遭遇して…。
外に出られても、戻れないよね。カラスがいたからって、窓もシャッターも閉まってるし、部屋には戻って来れない… 、あのシャッターにぶつかる音は、ナナが『開けて!』って必死に叫んだ音だった?
毬の頭の中は狂ったようになった。ごめん、ごめんナナ。
「ナナーぁ!!」
毬の絶叫が響き渡った。
部屋の中から徹が慌てて階段を上がって来る音が聞こえた。
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