第3話

「大体あんたはね、人の話を聞かないのよ」




 おかしい…今日は先日の失敗を活かして例の路地裏に行かないように

気を付けながら夕食後のランニングに出たというのに…おかしい。




「…ねぇ、聞いてる?」




「ああ、魚へんに青で何と読むかだっけ? サバだよ」




「そんな話はしてないわよ!」




「それより一つ聞きたいことがあるんだけど」




「自己中か! 人の話を先に聞きなさいよ!」




「なんで俺はこの路地裏に来てしまうんだい?」




「聞きなさいよぉ!! はぁ…」




最近の若い者は怒りっぽくていかんな。


俺を少しは見習ってほしい。




「あんたねぇ…! まぁいいわ。 それであんたが何故ここにきてしまうかを聞きたいのよね?」




「あぁ、そうだね。 どうもおかしいんだ」




「それはね……私があんたに魔法をかけたからよ!」




「……」




「……なによ」












……そうか。 きっとこんなおっぱいが素敵なメイドが言うのだからきっとそうなのだろう


おっぱいが大きいから、中2病ってわけでもないんだろう。


おっぱいが大きいから、虚言癖があるわけでもないんだろう。


おっぱいが大k…「しつこいわね!」…さーせん。でも、おっぱいは正義。




「それで…? なんで俺にそんな魔法?をかけたんだい?」




そんな魔法をかけたからには何か理由があるはずだ。








「そんなの決まってるじゃない…あなたが…勇者だからよ!!」




「人違いです」








平凡な日常を送っている主人公がある日、美少女と出会いその美少女を助けるやらなにやらして最終的に世界を救ったり救わなかったり…確かに俺が今おかれている状況はそれに似ているかもしれない。

だが、俺はこの日常が気に入っていて、そんな非日常は望んでいないのだ。

ましてや俺みたいな平凡な人間が勇者だって…?




「馬鹿じゃねえの」




「馬鹿じゃないわよ!」




「いい精神科知ってるんで紹介しましょうか?」




「いらないわよ!」




「大体いい歳こいて魔法って…いい加減現実見たらどうですか」




「自分に不都合になった瞬間に辛辣になったわね! ほ、ほらおっぱいは正義なんでしょ? 今ならひともみくらい、い、いいわよ?」




「けっ、ただの脂肪の塊じゃねえか」




「ほんとにどうしちゃったの!?」




おっぱいよりも平凡な日常のほうが大事に決まっている。


この無駄乳女が!!




「むだっ…!? とにかく聞きなさい! それで、私は勇者を見つけ出し、来きたる日まで世話をするためにこの世界とは違う世界からきたのよ」




すでにこのメイドの妄想は世界を跨いでしまっているようだ。 まだ治療は可能だろうか?




「勇者は一目みればわかるっておばさまが言っていたけれど、その通りだったわ。 あんたを見た瞬間にびびっときたもの」




手遅れのようだ…




「だから私はあんたがこの世界を旅立つまで世話をするわ!」




「家政婦は別にいらない」




「家政婦ではありませんメイドです」




「…なんで丁寧語?」




「もともとはこのキャラで行こうと思ってたのよ! でもあんたが逃げるから! 素が出ちゃったのよ!」




「素のほうが俺は好きだよ」




「えっ、あ、ありがと…/// ってどこに行くのよ!」




「ちっ」




バレてしまったようだ。




「今日は逃がさないわよ! 魔法を使って…って何で二人いるのよ! まさか、分身!? あなた普通の人間って自称するなら普通の人間しなさいよ!」








後ろで何か聞こえるが気のせいだろう。


…今日の夕飯は鯖にしようかな。

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