Let it be...

最初の頃よりかは、この場所 《Let it be...》にも慣れて少しずつイズミさん以外の方ともコミュニケーションを取れるようになった。

まだまだ口下手かも知れないけれど、私にとって着実に1歩ずつ、進む方が性が合うように感じた。


Let it be...は、言うなればなんでも出来るコミュニティ。

この場所で活動する方はLib《リブ》と言われていて、

スイーツを作成・販売する「スイーツLib」

手作り雑貨を作成・販売をする「グッズLib」

アーティスト活動をする「アーティストLib」

今のところ、大まかには3つに分かれている。


自分のやりたい事や、自分の「好き」を誰かの「幸せ」に変えるための小さなステージ。

イズミさんはその中でも「アーティストLib代表」をしながらも、音楽活動をメインとして、ファッションショーや店内BGMを作ったりと、幅広くこの場所で活躍をしている。


私はイズミさんと同じく「アーティストLib」で、男装をしている。流行りの音楽に乗せて歌を歌ったり、男装モデルをしたり。

たまに男装をしながらお手伝いとして他のLibさんが営む、スイーツ販売のスタッフをしたりととても有意義な時間を過ごさせてもらっている。



今日は、自分がここへ来て1ヶ月が経つのを記念してちょっとしたパーティーが開かれる。

Let it be...では、Lib達の記念日をこまめにしている。宣伝にもなるし、主役ではないLibらも自分の得意を見せることができて、沢山のお客さんが来てくれる。

そんなみんなで力を合わせて作っているこの雰囲気が大好きでいつも楽しい時間を過ごしている。

そして、とうとう私の番がやってきた。


こんな私を応援して下さるファンの方や、他のLibを応援している方まで沢山の人が来る予定。

だから、早めに来て同じグループのメイク担当のかな先輩に先程からお世話になっている。


かな先輩は、メイクの技術が圧倒的でファッションセンスもとてもいい。


「メイクは自分を守る為の武器」


いつもこの言葉を掲げながら、色んなアイシャドウやリップを駆使くししてLibやお客さんを魔法のように輝かせている。

メイク教室もたまにやっていて、まだおさなげな中学生から今一度、メイクを見直す大学生まで、幅広い年齢層がやってくる。

金銭面もしっかりフォローをして、学生さんでもコストパフォーマンスがいい物を提案し、個人の肌に合うものをチョイスしている。



「すーちゃーん!!そろそろ準備してあげるからおいで〜!!」


ここでは翠咲すざくという名前で活動していて、いつもみんなからすーちゃんと呼ばれている。


鏡の前にずらりと並べたメイクグッズを見てかな先輩の気合の入り方がいつもと違うのがよくわかる。

椅子に座ると前髪を上げてくれ、戦闘態勢せんとうたいせいの様な格好をしたかな先輩と鏡越しに目が合う。


「よっしゃー!!始めるよぉー!!」


前もって、私の肌に合うものを探してくれたらしく、手際よくいろどってくれている。


「やっぱ、肌が綺麗なのはいいねぇ〜。メイクのやりがい感じちゃうよ〜」


「ありがとうございます…!かな先輩に言われたら調子乗っちゃいそうです…」


「乗っていいんだよぉ〜!!今日は記念日だしね!!」


「だいぶ緊張してるけど頑張ります!!」


「その意気だよ!あっ、このリップ、めっちゃ綺麗な発色だけど味はあんまりよくないから気をつけてね」


「かな先輩…言うのがすこーしだけ遅いです…」

苦い味が口に広がるのを感じながら、ケラケラと笑うかな先輩に飾り付けて貰った。

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