無題
屋上十一階。夜風が強く吹いて、このまま落ちてもいいかなと思う。
きっと誰も弔ってくれないだろうから、自分で持ってきたユリの花を、足下に置く。イヤホンからは、爆音でクラシックが流れていて、今か今かと、死を待っている。
一番お気に入りの靴を脱いで、柵を乗り越える。靴下からコンクリートの冷たさが伝わってくる。
今、飛べば、全部綺麗に終わらせられる。今、この手を離せば、楽になれる。大丈夫、できる、できる、できる―――。
そんな夢を、もう何度見たか分からない。
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