第5話

「チョコ、大丈夫か?」



 ふと正気に戻ると、チョコはジャンボに抱きかかえられていた。

寝台のふちに腰掛けて、その横にはバニラも座っている。

チョコは何が起きたのか分からなくて、ジャンボと視線を合わす。

すると、ジャンボの顔に怪我かいくつか見えた。


 混乱は深まるばかりだ。



「なにが……起きたの?」



 直前の記憶が酷く曖昧で、チョコは頭を抱えてうなった。

部屋の飾り付けに喜んで、豪華な食事に喜んだ記憶がある。

けれど、その先で。なにか。



「お前が食べたいって言ったチョコレートを用意したんだよ」



 チョコはゾッと総毛立つように震えた。

そうだ、チョコレート。大好きだった。誕生日のお祝いにいつも貰っていた。



「色々思い出したんだろうなぁ。たぶん。バニラが正しかったよ」



 チョコは戸惑いながらバニラの方を見た。

心配そうにこちらを見つめる瞳を。



「俺がなんかしたの?」

「なにも」



 ジャンボは元気よく笑った。

チョコは、自分を抱える腕に顔を埋める。



「チョコレート、好きだったんだ」

「知ってる」



 何が起きたのか、なんの記憶なのか、チョコはずっと封印していた全てが嵐のように渦巻くのを感じて、少し震えていた。

その背中にジャンボは布団をかける。



「このまま寝るか?」

「それもアリだね」



 ジャンボとバニラは笑う。

チョコは不安と安心を同じくらい感じて、疲れで目を開けられなかった。


 その十数分前のこと。

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