第6話

 夜が来た。

四合院の中は真っ暗だ。

江白はその闇の中にいると、チョコとバニラの肩に触れられる気がした。

寝台に横たわり、回想にふける。

晩飯のために買った野菜が部屋の隅に少しずつ溜まっていった。

それに、朝飯も処分するまでずっと、ハエが飛び回り続ける。


 部屋の中は不潔ではないのに、変な虫がちらほらと見えるようになった。

なにか細長く平べったい虫が、バニラのカバンに入り込む。

月明かりの中、見えてしまった光景にジャンボはため息をついた。


 このままじゃ明日、カバンを開けた時に、バニラが大騒ぎするだろう。


 江白はカバンをひっくり返して虫を追い払った。

その中に教科書やノートや筆記具や、絶対に関係の無い雑誌なんかも隠すように入っていて、江白は笑う。


 明日ちゃんと叱らないと。

そう思いつつ、中身を戻して、カバンを元の位置に置いた。


 明日。江白は毎日、明日を待っていた。

暗闇の中、やっと彼らの肩に手を触れる。

なんだやっぱり、全部夢だったんじゃないか。

そう思いながら目を覚ました。


 また明日。起きた江白は3人分の朝食を作る。

ずっと明日を待ち続けた。

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