第5話

 変わらぬ日常を続けているつもりだった。

けれど、江白は自分でも気が付かないまま、少しづつ行動や表情が変わっているらしかった。



「最近、ようやく少し笑うようになったね」



 仕事帰りに隣人と話していると、そんな言葉を聞いた。



「最初にアンタと会った時をなんとなく思い出すよ」

「そうですか」



 彼はそういうものかと納得するだけで、会話もあまり続かない。

最初に会った時と同じだ。

死に場所を探すような生活を送る江白を、なんとか引き留めようと隣人は毎日声をかけていた。


 そんな気持ちを理解できないわけではない。

ただ、全てが自分の周りから遠く離れていっただけだ。



「気にかけていただいて、ありがとうございます」



 江白は自然な笑みを浮かべた。

隣人は言葉の通り、その笑顔に少しだけ安堵する。



「きっと、チョコとバニラもアンタが笑ってる方がーー」

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