第2話

 朝が来た。

目を覚ました江白は台所に立ち、すっかり慣れた手つきで三人分の朝食を作る。

朝日が優しく部屋に差し込んでいる。

彼は席につき朝食を食べ始めた。

一人の時は味も見た目も気にしたことなどなかったのに、テーブルに並んだ料理は盛り付けも丁寧で、味もそこそこに良かった。


 江白は身支度を整えて、さらに袋をひとつ持って外に出る。

四合院の庭には、日課の水やりをする隣人の姿があった。



「おはよう」



 隣人は力強く笑って江白に声をかける。

彼は答えながら、さっき掴んだ袋を隣人に差し出した。



「なんだい……?」



 少し怯えたような声を出しながら、隣人は袋を受け取って中を見る。

すると、野菜がいくつかゴロゴロと入っていた。



「どうしたんだい、これ……」



 江白は説明しようと少し考え、やっと隣人に伝えた。



「みんな、俺が狂ったと思ってるみたいなんです」



 隣人は思わず呼吸を止めて、江白の顔を見る。

笑いもせず、怒りもせず、淡々と彼はつづけた。



「頂いても食べきれなくて。良かったら」



 隣人は言いたい言葉がいくらでもあったが、全て飲み込んで「分かったよ」と頷いた。

彼は適当に挨拶をして、今日も工場に出勤していく。

私もアンタが狂ったと思ってたよ、とはさすがに言えなかった。

彼の家のテーブルの上には、手付かずの朝ごはんが二人分、もう湯気もたたずに放置されていた。

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