空席【夜光虫if】

レント

第1話

 工場からの帰り道、江白はいつものように店に寄った。

今日の晩飯と明日の朝飯の献立を考えながら、野菜を見比べて歩く。

さほど時間もかけず会計を頼むと、店主が他の野菜もいくつか掴んだ。



「二人共、食べ盛りだろ。オマケだよ」



 江白は少し驚き、すぐに頭を下げた。

そして店の外へ出て、家への道を歩いていく。

途中で綺麗な風車がからからと風に吹かれて回っているのを見た。

江白は出店の店主を呼び止めて、二つ選んで会計をした。



「ありがとな」



 店主はたまに立ち寄る江白に、毎回必ず声をかけた。

江白はいつも変わらず、そっと頭を下げてまた家路に戻る。

その後ろ姿をつい、出店の店主は見送っていた。

いくつも並んだ風車は、風を失い回るのをやめた。

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