第3話

 買い物に毎日行くわけじゃない。だから、買い物に行った日に食べられる好物が私にはある。正直お高い物ではない。ていうかむしろお安いの代名詞。でも好きなんだなぁ。それに日持ちがしないから、お買い物行った日の特別な食材。

 何かって?まぁそんなに引っ張るものじゃない。

 もやし。

 は?とか思った?

 だって好きなんだもん。


 ちなみに私の好物は細もやし。


 私は関西出身で、今関西在住。

 だけど、ちょっとの間、正確には半年だけ東京に住んでたことがある。

 なんのことはない。

 大学卒業して今の会社に入ったとき、新人研修という名目で全員が東京近郊(まさか東京にあんなに田畑があるとは思ってなかった・・・)に住んでたってだけ。それも社宅。一応部屋にキッチンもついてたし、自炊も多かった。

 けど、あれはないわぁ、と思ったのが、もやしとネギだったね。

 関西人あるある、らしい。

 今は関西でも細もやしは減ったけど、ネギと言えば青ネギだからね。

 いやぁ、さすがに有名な立ち食いそばを食べに行って、あれがでてきたときにはなんじゃこ思った思ったね。

 だってそばに入ってたネギ、東京ネギだったんだもん。

 なんでそばにあんなごっついネギが入ってるのか、って、ちょっとひいたのは懐かしい話。


 まぁ、いいか。


 細もやし。


 昔は日本中、もやしと言ったら細もやしが主流だった、って先輩から聞いたことがある。真偽は知らない。

 けど、少なくとも、私が好きなもやしと言えば細もやしのことで、母なんかは、細もやしのことをもやしって呼んでて、いわゆるもやしのことを太もやしって呼んでる。

 「最近はもやしない店増えてかなんわぁ。太もやし、くっさいから、嫌いやねん。」

 なんて、言ってる。


 私も、はじめそう思った。

 あるとき、子供の頃読んだグルメマンガのことを思い出して、一応は、解決したけどね。

 確か歯医者さんの置きマンガで読んだんだったかなぁ。

 「もやしっこ」て呼ばれていじめられてる子の話、だったような気がする。内容はちゃんとおぼえてないんだけどね、そのとき、主人公の人が、もやしは根を切るとこんなに美味くなるんだ、なんて言ってたの。

 そのとき、もやしの根なんてどこからかわからんやん、なんて、子供ながらに突っ込んだのを覚えてたのよねぇ。

 細もやしは、全体が根と大して太さの差がないし、味だって臭くないからね。

 でも、東京にいたとき、そのことを思い出した私は、もやしの根を切って食べてみた。うん、臭みの原因が根だったって分かったね。

 もやし大好きっ子としては、東京でも、太もやしをゲットしては、ちまちまと根を切り取るのが、微妙にストレス発散になって、しかも味はそもそも好き、食感がこれはこれで美味しい、なんて、やっぱりヘビロ購入の食材だったなぁ。


 でも。


 今日はちゃんと細もやし買ってきました。

 ちなみに細もやしって太もやしより10円から15円ぐらい安いんだよ。1袋30円切ってる時もざら。なんてコスパがいいんだろう。しかも根なんてきらずに最高のお味です。



 家に帰って、冷蔵庫に買ってきたのを放り込む。


 私の家の冷蔵庫。

 メインフロアーは、ほぼ瓶と缶なんだ。おほほ、何か問題でも?


 瓶っていうのは、ほぼほぼドレッシングです。多種多様のドレッシングが並んでる。あとは、ちょこっと鍋や焼き肉用のタレ、かな。

 缶は、基本ビールとチューハイ。

 乙女のたしなみですのよ、おほほ。

 戦うOLは、夜の付き合いが重要なんです。

 だってね、酔っ払ったらご接待できないじゃないですか?

 意外といいネタってのは、酒の席でゲットできるもの。

 ずっとほろ酔い、ってのが、良いのであって、酒は飲んでも呑まれるな!

 日々、肝臓を鍛えてます。って、単にお酒が好きなだけ、なんだけどね。


 本日のごちそうとして、当然もやしの出番です。


 もやしは洗わなくていいんだよ、って知ってるよ、もちろん。

 でもさ、なんか気分の問題。

 さっと水洗い、浄水でね。

 フライパンに油をひいて、もやしをツッコミ、くたっとなる前に、今日は、君に決めた。わさびの入った醤油ベースのドレッシングを取り出します。

 これで炒めて完了!


 そう。

 私のドレッシングコレクション。

 サラダにももちろん使うけど、全部炒め物にも使うよ。

 ゴマ系も醤油系もフレンチだって、炒め物の味付けにとっても重宝します。野菜だけじゃなくて、お肉もOK。

 これを見た、特に主婦の子なんて、びっくりするけどね。

 だいたいドレッシングとかって、プロが作った完成のお味でしょ?

 まずいはずがない!

 好き嫌いはあっても、味としては完成されてると思うんだ。サラダにかけるってことは、野菜や肉、魚、なんでも完成させられるもの。火を入れたって、大概のは問題なく美味しい物ができあがる。プロのお味、ですよ。


 文句言う皆様を、いったいどれだけ黙られてきたことか。

 ていうことで、手抜きと言われようが、私の味付けは基本、プロが丹精込めて仕上げたドレッシングやタレなんかで完成されるのです。


 月曜日。


 本日の夕飯は、馬刺しともやし炒め。アップルのチューハイが、香りを足してくれました。

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