第8話

 神代との関係がはじまったけれど、ボクは根津 美夢との関係が大切だったし、今でも彼女との関係はつづいている。

 ボクたちは小学三年生になった。神代は、自ら「ヒューメイリアン」と名乗ったけれど、目的は不明だ。単に、エッチが好き……というわけではないだろう。アデラのように、ボクが『特別』だから、地球上でエッチをさせて、それを観察しよう……という程度の目的ではないはずだ。なぜなら、宇宙人の側でも少数派に属す……ということからも、彼女たちが『特別』というボクに接近するには、もっと大きな理由があるはずだった。

 美夢と、二人で手をつないで帰宅しているとき、急に加速する車をみつけた。それが、ボクたちに向かって接近してくる。歩道もなく、ガードレールもない道で、ボクも「危ない」と、美夢の手をひいて、道路に立っていた電柱の陰へと走りこんだ。

 車は電柱に激しくバンパーをぶつけたけれど、ボクらに当たることはなく、そのまま走り去ってしまった。

「な、何⁈」

 美夢もびっくりしているけれど、ボクの腕の中にいるので、恐怖はしてもショックは少ないようだ。

 でも、ボクはショックだった。あの車は、明らかにボクたちを狙っていた。まったく関係ない、ただの通り魔である可能性はあるけれど、ボクが『特別』とされたことと無関係なのか……? 確信がもてなかった。


 交通事故だったので、警察にも聞かれた。ナンバーを憶えておいたけれど、それで犯人が捕まるのかどうか……?

「大丈夫?」

 姉がそういって、ボクの顔を覗きこむ。警察から連絡がいって、保護者が呼ばれたのだ。といっても父親は海外出張中、姉が迎えにきたのである。

「ボクは大丈夫。でも、夢ちゃんが怖がっていて……」

 彼女の母親も来てくれて、今は母親に抱かれて、警察と話をしているところだ。

「そらはこういうとき、とっても落ち着いているね」

 姉はそういって笑う。それがヒューメイリアンだから? 分からないけれど、姉は笑いながら「一度、マンションの窓から私が落ちそうになったときのこと、憶えている?」

「そんなことがあった……ぐらいには」

「そらには、その程度の記憶なんだね。私が柵につかまって、もうダメ……と思っていたら、柵の中から私の手をつかんで、そらが『そこに足をかけて。左手はそこを掴んで』って、ずっと指示をだしてくれたの。諦めかけていたのに、そらの指示通りにしたら、助かったんだよね」

「それは、こうすればいい……というのが分かっていたからだよ」

「そうだけれど、あのときそらが落ち着いていたので、私も落ち着くことができた。こうすれば助かるんだって思えた。そらって、そういうところがあるんだよ」

 それは大人びているから? そうではない。でも、ボクがヒューメイリアンであることと、何かつながりがあるのかもしれない……と感じていた。


「命を狙われた?」

 神代に話をすると、すぐにそう返してきた。彼女の背後にいる宇宙人が、何らかの関わりがあるのでは? と考えていたけれど、彼女はそれを知らなかったようだ。ちなみに、警察は単なる事故として処理しており、ボクが命を狙われた、という見方はしていない。

「神代さんは、どうしてボクに近づいたの? 奴らに命じられたのでは?」

 思い切ってそう尋ねた。

「彼女たちからは、何も言われていないわ。私……あなたがどうかは知らないけれど、〝子づくり〟するよう要請されている。初潮を迎えたら、彼女たちから性の手ほどきをうけ、実践することを求められた。

 だから、初めての相手にあなたを択んだだけよ。だって、ヒューメイリアンはエッチが上手い、と聞いていたし、あなたの噂は前から耳にしていた。何だか特別で、彼女たちも注目しているって」

「注目……?」

「有名人じゃ~ん」

 悪ふざけをするように、神代はそう茶化してくるけれど、ボクは笑ってもいられなかった。

 神代には説明していないかもしれないけれど、命を狙ってきたのは、彼女の背後かもしれないのだ。


 でも、ボクは神代の存在をありがたく感じていた。こうして、ヒューメイリアンのことを相談できる相手は、彼女しかいない。目的が不明で、彼女が何を望んでいるのか? それすら分からないけれど、秘密にすることが耐えられなくなると、彼女と会いたくなる。

 ただ、彼女と連絡をとると、少々の問題も覚悟しなければいけない。

 彼女はボクのそれを銜えてくる。小さな口でボクを含み、舌を絡めて、手で優しく根本の方を刺激してくる。

「やりたくない」といっても、こうして刺激されると反応してしまう。ボクもまだ小学三年生、そうした刺激には弱い。

 反応すると、すぐに神代はボクに跨ってきた。目の前で、美夢にはまだ期待できない、小さいけれど盛り上がった二つの膨らみが上下すると、ボクも思わずそれを両手でつかみ、そのまだパンパンで張りのある感触を確かめてしまう。

 絡みついてくる彼女の中も、またいい具合だ。ボクとしかしたことない、と言いながら、ボクのそれを最高と言っている。彼女のその盲目で、感応を官能と誤解している点も、気になるところだった。

「あ~ッ! お姉ちゃん、もう始めてる!」

 そこに入ってきたのは友理奈の妹、美羽奈。また今日も二人とか……。ボクも苦笑しつつ、衝突するように唇を重ねてきた美羽奈を抱き止めていた。









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