第5話

 ボクはヒューメイリアンとして、女の子と関わり合いになりながら生きていくこととなった。しかしそれを語ることは許されず、ボクはあくまでふつうの人間として生活する。家族でさえ内緒……というか、今いるのが本当の家族かどうかさえ怪しいのかもしれない。

 姉とも、血が半分しかつながっていないか、もしくはまったく繋がっていない可能性もあった。

 アデラは、宇宙人と地球人とのハーフ……という言い方をしており、父親と母親、どちらがそうなのか? それとも、どちらも違うのか? ボクがどういう形で血縁を結んだのか? それすら不明なのだ。

 一番、考えられるのは母親が宇宙人と……だけれど、母親の性格上、それを黙っておけるか? 父親が関係したとすると、お腹を痛めていない母が、それを受け入れたのだろうか?

 愛人の子、とでも説明すれば、あり得ない話ではないけれど、今一つすとんと落ちてこない。

 やはりカッコウ……、托卵のようにボクを千木良家に送り込んだ、と考えるのが正解と思える。両親は記憶でも操作されたか、それとも契約を結んだか……。

 いずれにしろ、彼女ら宇宙人は、ボクが地球上で生活し、そして子を生すところを観察したいのだ。無茶を承知で、無理を通そうともするだろう。

 ただ、ボクを観察したい人たちは、もっといるようだった……。


 美夢との初エッチを終えてすぐのころ、ボクは二つ上の少女に、放課後の学校で呼びだされた。

「私、神代 友理奈。よろしくね」

 人気もない空き教室で、そう自己紹介された。ショートカットでショートパンツを穿いており、活発な印象をうけた。

「私、あなたに興味があるの」

 くりくりした大きな瞳で、ボクの顔を覗きこんでくる。小学生で歳が二つちがえば大きな差である。いくらボクが大人びている、といっても神代が興味をもつほど、とは思えなかった。

 でも、教室の外に誰かの歩く足音がすると、彼女は「こっちに来て」と、ボクの手をつかんで、教室の隅にあるカーテンのところに連れていく。

 そこは本来、ロッカーがあるべき場所だけれど、空き教室なので撤去されており、子供二人がカーテンにくるまっていても、その姿を完全に隠してくれる。

 足音が遠ざかっていく……。ただ、教室の前を通過しただけのようだ。

 でもそのとき、神代は体を寄せ合うようにしていたボクの唇に、自分のそれを重ねてきた。

 身長は彼女の方が高く、覆いかぶさるようにして、口を押し付けられた。しかも初めてとは思えないぐらいに手慣れた様子で……むしろ口慣れた、といった方がよいのか? ボクの唇に吸い付いてくる。

 体は大きく、力もつよいので、撥ね退けることができない。女性が、男性に押さえつけられたときは、こういう気持ちなのか……。そんなことを考えつつ、口の中に入りこんできた舌に、ボクも戸惑っていた。


 互いの唾液がたっぷりと交じり合ったころ、やっと彼女は唇を放してくれた。

「やっぱり……」

 彼女は微笑みとともに、そう呟く。

「何が?」

「女の子との関係、初めてじゃないでしょ?」

 何を知っているのだろうか……? でも、確信をもっているような、彼女の態度が不安にさせる。

「幼稚園のころ、女の子に悪さをしていましたが……」

「ふふ……。じゃあ、私に悪さをしてみる?」

 彼女はそういうと、ボクの腰の辺りに自分の右足をからめてきた。そしてボクの右手をとって、シャツの中へと導く。ブラウスの上からでも、やや膨らみのある感触が伝わってきた。

 姉の胸をさわり慣れているので、その程度で興奮することはない。でも、彼女のホットパンツがボクの股間へと、刺激するようにぶつかってくる。それに、このカーテンで包まれた、まるで二人しかこの世にいないような、そんな密閉された空間であることに、弥が上にも心拍数を上げていく……。

「ほら、大きくなってきた」

 彼女はそう呟くと、自らショートパンツのホックを外し、するりとそれを足元へ落とす。その下にある、黒いぴったりめのレギンスを、両手をつかって押し下げた。

「ほら、自分で脱いで」

 彼女に言われるがまま、ボクも自らズボンを脱いでいた。


 本当にするのか……? ボクも未だに半信半疑だ。からかわれているのでは? どこかで「やっぱり嫌」と言いだすのでは?

 でも彼女は、脱ぎかけて右足の太ももにのこっている黒のレギンスを、ボクの腰にこすりつけるようにしてからめ、自らボクのそれをにぎって、自分の中へと導いていく。

「あ……」

 つながった。ボクもこれまでの経験で、そう判断できた。彼女は本気で、ボクとつながってきたのだ。

 神代は自ら動きだす。ボクは彼女の重みを支えるために、カーテンの張りも頼りにしつつ、足を踏ん張って耐える。

 彼女は「……ん!」と、小さな声を上げるとともに、その律動を止めた。

「やっぱり……いいわ」

 彼女はつながったまま、ふたたび唇に吸い付いてくる。

 ボクも彼女の求めに応じて関係してしまったけれど、彼女がこれから何を求めてくるのか? 未だに分かっていない。恋人になりたいのか? それとも……。

「ヒューメイリアンとのセックスは、最高だわ」

 彼女は思わずつぶやいたようだけれど、その言葉はボクにとって衝撃だった。その事実を知られていた、ということと、その事実を知らなかったことに……。


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