第2話

入り口に立つとドアが開かない。

何度かかかとを上げたり下ろしたり。

しばらくすると店員がやって来てドアを開けた。

「このドアは自動ドアじゃないの?」

「停電になったら困るから自動じゃないんだよ」

「山の中だから?」

「そうなんだよ。ところで一人なの?」

「はい」

「食事をするの?」

「はい。お願いします」

「お金は持ってるの?」

「お金って何ですか?」

「え~?」

 

 

稔はレストランでは

「食事をお願いします」と言えば食べることが出来ると思っていた。

 

 

「店長」

「何だ」

「この子はお金を持っていないんですけど」

店員はお金を持たない子どもの対応に困っていた。

 

 

店長が近付いて

「坊や、お金を払わないで食べるつもりだったの?」

「お金を払うって?」

「どうなってるんだこの子は」

 

 

稔は次元が違うことは知っていたけど、お金の話はまったく知らなかった。

ましてやお金という物が無いと食事が出来ない。

何を話してよいのか稔には思い付かなかった。

 

 

信じてもらえるかわからなかったけど稔は本当のことを話すことにした。

 

 

「あの~。僕はお金のない世界から来たんです」

「え~!何言ってるんだ君は?」

店長と店員は驚いた。

「本当なんです」

これ以上聞いたところでどうにもならないと判断した店長は「とにかく座りなさい」と稔に言って店員は稔をテーブルに案内した。

 

 

テーブルに案内されて稔は座った。

そして店内を見渡して

「お客さんはいないの?」

そう言うと店長が

「昨日から猛吹雪でね入山禁止になってるんだよ」

どうりでスキー場に人がいなかったと気付いた。

 

 

「お金は要らないから何を食べたいの?」

店長がやさしく言ってくれた。

「ありがとうございます。カレーをお願いします」

「よしわかった。飛び切り美味いのを作るよ」

「ありがとうございます」

店長は厨房へ行き店員は水を持って来てくれた。

 

 

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