第10話

イギリスの詩人ジョージ・ゴードン・バイロンは

「事実は小説より奇なり」という言葉を残した。

まさにその通りだと僕は痛感した。

ほんの小一時間前に通りすぎた空かずの踏切が近くにある路上で先輩が数人のガラの悪い男たちに取り囲まれ

白いミニンに乗せられそうになっていた。

緊急事態に直面すると、よほど場馴れしていない限り、人は一瞬フリーズしてしまうものだ。

気をとりなおしてよく観察すると男たちの中に先刻先輩が返り討ちにした男とミニバンの助手席から野次を飛ばすリョウコちゃんを認めた。恐らく偶然先輩を見かけて仲間たちと報復もかねて乱暴しようとしているのだろう。

「雑な展開だな!

先輩!そんなに夕方のニュースに出たいんですか!?」

と誰にともなく呟いてミニバンの男たちに駆け寄った。

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