第7話

先輩はさっきまで口角飛沫を飛ばして自分の彼女に捲し立てていた男の方に声をかけた。

「すいません、少しよろしいですか?

他のお客さんが迷惑してるんですけど?」

「あ?何だ?コイツ?」

男が頭から水を滴らせながら凄む。

その姿が駅前の噴水の中にある謎生物のモニュメントを彷彿とさせ、僕は必死で吹き出すのを堪えた。

女の方は何事か金切り声でわめいていたが

文字通り頭を冷やしたらしく次第にクールダウンしていき

最終的に男がギャラリーに向かって「てめえら、なに見てんだよ!!」と凄み、横で自分を叱る教師のように腕組みして自分を睨んでいた先輩に掴みかかろうとしたが軽く捻られ手首を締め上げてしまった。うめき声をあげる男、

先輩容赦ねーな。

そうこうしているうちに店長がレジコーナーの奥から出てきて二人に事務的な態度で退去を命じると女が「まだ全部飲んでない」云々と食い下がったが、

先輩の返り討ちにあい「恥をかかいた」男の方が

「リョウちゃん、コンビニで好きなスイーツかってあげるから~」などと宥めながら、店の開き戸を乱暴にドカンと閉めて出て行った。

けたたましくドアベルが鳴った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る