第6話

思わず僕はその席の方を振り向いた、すると中年の柄の悪そうなカップルが何事か言い争っている。

男の方は歌舞伎役者のようにイケメンだが日焼けした丸刈りでいかにも「ヤンチャしてます」という風貌で

女の方は離れた席に座っていても届くほど香水がキツく、最近放送されている携帯キャリアcm の俳優に似た雰囲気だった。おまけに背中に「X」と刺繍されたスカジャンを羽織っている。

どうやら些細な痴話喧嘩のようだ、が、周囲は老人や子連れのママさんばかりで遠巻きに見守るだけで誰も注意しに行かない。店員さんもだ。席を立つ客も何組かいた。

そうこう解説すているうちに口論が一段とエスカレートしてきた。

「!?」

僕は思わず目を見張った。止める間もなく

突然先輩が僕と自分のお冷やのグラスを持って席を立ち、口論がますますヒートアップする件のカップルのテーブルへ向かう先輩。

そして何の予備動作もなく両手に持った氷水のグラスを二人の頭にぶちまけた。

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