第3話

「これが時間調整の仕方なんだけどね……」


「へー、こんなちっこい秒単位で調整するんだぁ」


「そう! で、ここで直接入力しちゃえば……」


 ため息が出る。


何をやってるんだろうか……、俺。


これでみゆきがバケモノに襲われたとして、俺は助けてやることなんて出来ないし、かといってなにか起こっても、見捨てた感じで後味悪いし……。


あれ? 


でも俺的には、いまここで自分だけ逃げた方が、得なんじゃね? 


え? 


だけど、それもどうなの?


「……。はぁ~……」


 また深いため息をつく。


もうゲームアプリの今日のデイリーミッションは、全てクリアしてしまった。


持っていたスマホを机に放り投げると、天井を見上げる。


何にもすることがない。


だけど舞香のことが気になって、ここから出て行くことも出来ない。


彼女の背中を見つめる。


俺はどうすればいいんだろう。


そんなこんなで時間だけが過ぎてゆく。


ふと振り返ったみゆきと目があった。


「ねぇ、何してんの。することないなら、撮影にでも行って来たら」


「別にそういうわけじゃ……」


「じゃあどういうワケよ。邪魔なんだけど」


 舞香の目が、俺のスマホを見ている。


「圭吾は、スマホで編集とか加工とかも出来ちゃうタイプなの?」


「加工はしないよ」


 やっぱやってらんない。


俺は立ち上がった。


この部室が血まみれになっても、めちゃくちゃに破壊されても、何がどうなっても俺は知らんからな。


「今日はもう帰るって、希先輩に言っといて……」


 バタンと扉が開いた。


「あー! 舞香ちゃん来てたのね」


「希先輩!」


 いつの間に仲良くなったのか、希先輩と舞香は二人ではしゃぎだす。


そこにみゆきも加わって、一気にやかましくなった。


希先輩と一緒に入ってきた山本は、首にカメラをぶら下げている。


「なんだよ圭吾、いたんなら来ればよかったのに」


 山本はスマホを取り出し操作を始めた。


「連絡入れてただろ」


「う、うん……」


 言葉に詰まる。


そりゃ知ってたけど、俺はここを離れるわけには……。


山本はニヤリと笑って、俺の肩にアゴを乗せた。


「なんだよ。文句言ってたくせに、やっぱお前も浮かれてんだ」


「なにが?」


「可愛いよねー。舞香ちゃん。つーかお前、ここに舞香ちゃん来た時から、ガン見しすぎ」


「だからそれは誤解だって」


「またまた。素直じゃないんだから」


 写真部だなんて元々何をしに来ているのか、写真を撮りに来てるのか、しゃべりに来てるだけなのか、その区別が難しいような活動内容だ。


結局集まった5人でしゃべり倒しているうちに、下校時間になってしまった。


そのままの流れで、裏の山門から学校を出る。

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