第3章 第1話

 そんなこんなで、憂鬱な学校生活が始まってしまった。


なぜ俺がユウレイに憑依された、危険人物のうろつく空間にいなければならないのか。


「昨日来てた子、みんな可愛かったよねぇ~」


 同じ写真部の山本は、教室の窓枠に頬杖をつき、校庭を眺める。


「お前、基本的に女の子全員好きだろ」


「まぁね~。そりゃそうでしょうよ」


 昼休み、演劇部の連中は新入生勧誘目的も兼ねて、校庭で発声練習をしていた。


その中に憑きものの舞香もいる。


「舞香ちゃん、めっちゃ色白いよね~」


 外をのぞき見る。


彼女だけ抜けるように肌が白い。


だけどそれは、顔色が悪いだけなんじゃないのかと思ったりもする。


取り憑いた悪霊はどうなった?


「あれで裏方だなんてもったいない……」


 そりゃ表に出る役なんて出来ないだろうよ。


どこで正体バレるかわかんないし。


いや、悪霊と決まったわけではないのか? 


どっちにしろ、気持ち悪いことには変わりないけど……。


カメラに残されていた画像には、ヘンなものは写っていなかった。


やっぱ心霊写真なんてものはウソってことなのかな? 


もしかして見間違いだったとか。


もういなくなっちゃてるとか? 


そんなくだらないことを考えたり、やめてみたりを、ここ最近はずっと繰り返している。


「なぁ山本。演劇部への協力って、いつまで続けんのかな……」


「俺はこのまま、永遠に続いて欲しい」


 くそっ。


コイツとは話しにならない。


1学年に5クラスある高校だ。


去年同じクラスだったってだけで、記憶に残さねばならないほどの出来事は何もない。


山本情報によると、現在彼女は2組らしい。


俺たちは5組で、L字型の校舎では使う階段も廊下も違うから、ほとんど接点もなかった。


だから「あの日」以降も、校内で顔を見なかったワケだ。


本来なら充実した学園生活を送るはずだった、俺の青春を返してほしい。


どうして恐怖におびえながら、学校で過ごさなくてはならないのか……。

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