2022年3月16日 口コミ総合点★2の美容院で髪を切ってもらう-残り363日-
ホッ〇ペッパービ〇ーティー、美容室を探すサイトで見つけたそのサロンは
カット2,200円 カラーを付けて4,200円というお手頃価格だった。
私がずっと懇意にしていた美容師さんが隣県の系列店に異動になってしまったため、どうしたものか、と思っていた私は地域で検索して一番上に出てきたそのサロンをえいやっと予約した。
もう髪を三か月近く、切っていない。
美容室を探す気力とか、そういうのも生きる気力と共に喪われていたのだ。
だから、その美容室を予約したのは、正直、勢いだった。
もちろん、安いな、とは思った。
だが、一番おすすめ、と出ているし、こういうのは出会いだから~、と予約する前に口コミの確認もしなかった。
万一、起きれなくても大丈夫なように夕方に予約した。
その美容室に足を運んで、まず驚いたのは、荷物を預かってくれたお姉さんの手が
私は刺青に偏見などはないが、店内を見まわすと、三人いるスタッフのうち二人に
やはり、ごつい刺青が入っている。
隠すとか、しないんだなー……。と思いながら荷物を渡す。
少し早く着いたのでソファーで待つ。そして、時間近くなって鏡台がついた席に通される。その際に、首にタオルを巻かれたあと、ガウンを着せられた。
お茶を出されたときにコロナ対策でドリンク出さないところが多いのに珍しいな、でもドリンクの種類の希望とか聞かないんだ、とぼんやりと思った。
予約した時間になっても担当のスタッフの手が空いていないか待たされていたので、私はなんとなく、今更ながらそのヘアサロンの口コミを表示させた。
点数★2.09点
という数字が飛び込んできて、口の中のお茶を吹き出しそうになった。
★2台……。
しかも口コミを見ていくと、ほとんどの口コミが★1である。
その割合、実に80%近く。
「二度と行きません」
「史上最悪の体験」
「同じ思いをする人が出ないように口コミします。最低の店です」
うわあ……。
どうしよう、時間より20分も放置されてるし、キャンセルしようかな。
でも、ガウン着ちゃってるし、出された飲み物も飲んじゃったし……と逡巡していると、私を担当するらしい男性スタッフがやってきた。
「よろしくお願いします」
名札もないし、名乗りもしない。
「どんな風にしたいですか?」
「えっと……伸ばしていきたいのであんまり長さは変えずに整える感じで……前髪はちょっと短くしてほしいです」
「わかりました」
そして、髪を霧吹きで濡らすこともせず、なんなら梳かすこともせず、いきなり鋏を持たれた。
じゃきん、という感じで、跳ねた襟足を切られる。
心の中で絶叫した。
だが、まあ長さはそんなに変えないで、と言っておいたので、ダメージは少ないはずだ。
じゃきじゃきっと私の癖毛の跳ねたところを切った美容師は漉き鋏に持ち替えて、
ざくざくざくっと髪を切っていく。美容師の腕とかよく、わからないけれど、結構乱暴な切り方なんじゃないか、これ、という気はする。
「んじゃあ、前髪切っていきますね」
アッハイ と小さな声で応じれば、再び動き出す鋏。迷いなく、といえば聞こえはいいが、じゃきじゃきじゃきっと前髪が切られていく。
「これぐらいでいいですか」
「ハイ」
カットにかけた時間-約7分-
求めていたカットとは違うが、それでも鏡の中の自分はそこまで変な髪形をしてはいない。
そのことに安堵する。
「では、カラー入りますね。頭皮に薬液が沁みたことあります?」
私はごくり、と唾をのんでから答えた。
「あります」
普段はない、と応えるのに、その美容室でYESと言ったのは、カラーを選んだ客の口コミに「薬液を塗られて1時間ぐらい放置され、めちゃくちゃヒリヒリしているのに、全然来てくれなかった。頭にかさぶたが出来てしまった」などと書かれていたからである。
「んー、じゃあ、根本は避けますか。完全に染まり切らないけれどいい?」
ついに、タメ口!
私は赤べこのように首を縦に振った。振り続けた……。
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「じゃあ、ちょっとこのまま置きますね」
髪に薬液を塗られ、ラップをされ(その際にラップの芯が私の頭にぶつかる、ということも起きたのだが謝罪はされなかった)40分ぐらいの放置時間に私はカラーの口コミを中心に引き続き、その美容室の口コミを見続けていた。
生え際にブロッククリームを塗られなかったため、薬液が垂れて、顔に大きな痣みたいな色がついてしまった人。(ちなみに私もブロッククリームを塗られた覚えがない。めっちゃ怖い)
シャンプーが一回だけなので薬液が落ちきれてなくて、店を出たあと、コンビニでウェットシートを買って、髪を拭いたらべったりとカラー剤が付いたという人。
シャンプーの際に+5000円のトリートメントを勧められ、泣く泣く受け入れた人……。
読めば読むほど恐怖が大きくなっていくが、口コミを読む手を止めることができない。やばい、やばすぎる……。
「じゃあ、シャンプーしますねー」
シャンプー台に連れていかれ、髪を洗われる。
確かにシャンプーは一回だけ。ちなみに、トリートメントをしている様子はない。
湯加減はちょっと温いが、水でないだけマシである。
(冷たいままの水で髪を洗われた、という口コミ、シャンプー台に髪が濡れたまま放置された、という口コミもあった)
そのとき、「物足りないところありませんか?」とスタッフのお兄さんから声掛けがあった。
シャンプー中、そんな声掛けは皆無、という口コミばっかりだったので内心(いい意味で)驚く。
「アッ、ハイ 大丈夫です」
シャンプーが済んで、鏡台に移動し……次は、ドライヤーである。
今まで読んできた口コミたち(生乾きのまま終わった等)が容赦なくフラッシュバックする。
スタッフの人はドライヤーを二台もってきた。
両手にドライヤーをもって、一気に乾かそうという作戦か……生乾きよりかはなんぼかマシだ。
ぶおお、とドライヤーをあてられること……3分。
んん……確かに。たしかに、生乾き気味。
ドライヤーが終わり、これで終わりだ、助かった、と思ったら再度出てくる鋏。マジですか。
「最後に整えていきますねー」
最後の最後で「あっ」ということも起こりうるのでこれは気が抜けない。
だが、なんというか? スタッフのお兄さんはなんとなく機嫌良さそうに先ほどより心持ち、丁寧な鋏さばきで髪をと問えていく。
最後に鏡が出てきて仕上がりの確認をする。
私は一刻も早くこの美容室……というのは名ばかりの恐怖の館から抜け出したかったので、ダイジョウブデス、アリガトウゴザイマス、というだけのマシーンと化した。
最後のお会計の時、なにか加算されないか冷や冷やしたのだが、どうやら大丈夫だったらしい。4,200円しか、とられなかった。
私は ミッションをやり遂げた気持ちで帰路についたわけだが……
考えてみれば、4,200円あれば、結構いいお肉食べられるよな、などと思い……
いや、でも、大したダメージなく生還できたのだから、やっぱり良かったのだ。
ちなみに、カットはあんまり……だがカラーはちゃんと色が入ったので結構、気に入っている。
まあ、もう二度と行くことはないだろうけれど。
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