この物語は、問題ある親や不用意な教師の言葉に傷つけられたコータが色々な優しさに触れながら心を癒やし、成長していく物語です。
失意のまま入寮した至大寮には、コータと同じように心に傷を持った子供達が生活していました。子供のまま成長できなくなったネコという男の子に振り回されながら、放課後は美しい海で波に乗る日々。寮の仲間や優しく見守る大人達といろいろなことを乗り越えていきます。そして、透明な海と空に心にある悲しみや苦しみが少しずつとけてゆくのです。
詩のような文章は、端的ながら下田の海の美しさを心に届けてくれ、登場人物達の痛みや慈愛を伝えてくれます。
子供達の心の問題を、優しい文章ながらリアルにつたえてくれるのは、直にそういう苦しみをもつ子供達に関わった経験がある作者の力なのでしょう。
読後も登場人物達に心を寄せて、幸せを願いたくなる物語です。