...

 射し込む光で、

 ゆっくり、意識が浮上する。


 白いカーテンから

 柔らかい朝の陽と、

 ザン ザン ザザン ザン

 波が磯に砕ける音が心地よい。


 腕の中には大きなネコが一匹。


 ぼくは柔らかな光に包まれた新居を、ひどく穏やかな気持ちで眺めていた。


 こんなに穏やかな朝は、いつぶりだろう。


 十六年生きてきて、きっと十六年ぶりだ。


 ゆっくりベッドから抜けだしカーテンを開ける。


 朝の光を眩しくさざなみに転がして揺蕩う海が、眼下には広がっていた。


 光の粒が、静かな波の上でうねる。


 窓を開けて、潮の香りを肺いっぱいに、吸い込む。

 

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