第47話 パイモン登場

 我ら分神体は、人間界の日本という国に封印されている八岐大蛇の状況を調べようと試みたが、国を覆う大規模結界に阻まれて侵入できない。

 分神体がLv66のコピー体を創って何とか潜り込ませることに成功したが、今度は肝心の封印場所にレベルが低すぎて立ち入ることができない。


 奈落ダンジョンの最下層でルシファーたちは藁にも縋る思いで、

「誰か我らのために知恵を貸してはくれぬか」

 と叫ぶと、自身に忠実な悪魔召喚王パイモンが現れ、こう言った。

『私にいい考えがございます』

「申してみよ」

『人間を召喚し育て、結界を破壊させるのです。』

「ふむっ、そなたに任せるとしよう。途中経過を逐一報告せよ」

『ははっー、かしこまりました。必ずや良い結果を御覧に入れましょう。』


 パイモンは、召喚王だけあって、自身を時空を超えて転移させることができた。

 結界のある日本にも分神体を転移することができたので、情報収集させた。

 すると、ちょうどその頃、家庭用ゲーム機が世界中で流行していたので、それを使い、未来からクリエーターを何人も召喚して召喚用ゲームソフトを完成させる。

 このゲームをプレイすると召喚魔法が発動し、この世界に召喚される仕組みを創ったのである。

 召喚や洗脳などを直接行うと異端神問官や邪神討伐委員会に見つかる可能性が高く、自分が捕縛されてしまうので、

 次の77年後の翌年の西暦2100年に中継地を設置し、西暦3000年から召喚を行うことにした。

 これは2100年が討伐ゲームの翌年で監視が緩くなるのと、3000年は完全に時空管理局の庇護下に変わっているので、見つかりにくいと判断したからだ。

 これで3000年から2100年に転移させた魂を2022年に転移させ、選んでおいた肉体に融合させることができる。

 2100年には中継転移魔方陣を設置し、3000年では2100年のゲーム機をあらかじめ選定しておいた男女に自らの意思で購入するように誘導した。


 2022年の男女の転生先は、八岐大蛇が封印されている高校から少し離れた鈴木家の子供2人に決めていた。

 長男は高校受験の合格発表で死にかけ、救急車で運ばれるところで転移者と融合させた。

 同時刻、長女を転移者と融合させると、邪神の子として生を受け、現在仮の姿で人間のふりをしているという設定を脳内に刻み込んだ。


 彼女の最終目的は八岐大蛇の封印解除、そのためにはある程度レベルを上げて力を付け、兄と一緒に封印を解除してもらう。


 日本という国はつくづくおかしい。国全体を覆う大規模結界もそうだし、はっきりとはわからないが、誰かに監視されているような気になる。

 今月は77年に1度の討伐ゲームが行われるので、この1ヶ月は未来視がうまく使えない、靄がかかった状態だ。

 逆を返せば、神界の者たちも、こちらの動向は読めないということだ。

 この1ヶ月でやれることは全部やっておきたい。

 そうでないと、ルシファー様に報告など何もできない。

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