第34話 3月16日 顔合わせ

 エレナは時差ぼけの親友、さくらを起こし、準備させる。


「今日は高校に行って、職員への挨拶と、今後の打ち合わせもあるから、早めに行きましょう。」


「了解」


 身支度を整え、簡単な朝食を済ませ、学校に歩いて向かう。


 5分もかからず到着すると、何人かの教師はすでに出勤していたので、挨拶を交わし、皆そろったところで、校長から紹介された。


「おはようございます。忍賀さくらと申します。英国から戻って来たばかりで、日本は久しぶりですが、どうぞよろしくお願いします。」


「忍賀先生には、神成先生の補佐をお願いします。」


 と校長からお言葉をいただいて、挨拶が終わると、校長、エレナ、さくらの3人は、隣の特務室に入った。


 この部屋の入口は、職員室の中にあるのだが、向こう隣の校長室の隠し扉にもつながっていることを知る者はごくわずかだ。


「よく来てくれました、さくら先生、お父上にはいつもお世話になっております。」


「いえいえ、あんな父でもお役に立てて、良かったです。」


「大学の特別講師というお立場ですから、これからもよろしくお願いします、とお伝え下さい。」


「海外研修の方はどうでした?」


「諜報員試験で350点を取ってTall(トール)の資格まで取れましたが、その上のGrande(グランデ)は470点、何年かかることやら」


「日本ではお父上の源蔵さんくらいしかGrande(グランデ)の資格を有する人はいないのですから、仕方がありませんな」


「そうよ、私なんか高校の時に留学して、240点でShort(ショート)の資格しか貰えなかったのだから。」


「でも、エレナの実家が開発した強化スーツを着れば、今ならトールくらい取れるのでは?」


「さくらが着れば、グランデ、すぐに取れるんじゃない?」


「まあまあ、留学の話はその辺にして、本題の方に入りましょう。」


「はい。それで、この学校の地中深くに封印されている、八岐大蛇の首が動いたということですが」


「そうなんです。伝承では1000年に一度、封印が綻ばないように、重ね掛けすること、とあるようなのですが、」


「先日お父上に診てもらった時に試みてもらいましたが、1000年前に術を施した安倍晴明クラスの術者でないと、難しいそうです。」

「先ほどの資格の話に戻ってしまいますが、世界に数人存在すると言われているVenti(ベンティ)の資格を有する者に、お願いするしかないかともおっしゃってました。」


「諜報員協会や父と連絡を取りあって、ベンティの資格を有する方に接触できるように、していきたいと思います。」


「お願いね、さくら。」


「あと、4月から新しく1年0組を作りましたので、そのクラスの担任に神成先生、副担任をさくら先生にお願いします。」


「日本の諜報活動を担う人材の育成ということで、4名の生徒に指導の方、お願いします。」


「1人は私の妹のカスミで、もう1人はエレナの妹の婚約者のトーマ君か。」


「頑張っていきましょう」


 しばらく打ち合わせをした後、


「お昼食べに行きましょうよ」とさくらが切り出したので、


「そうね、じゃあ、あやみを誘って4人で、病院の前にあるお蕎麦屋さんで食べましょう。」とエレナが答えた。


「いいわね、向こうには美味しいお蕎麦屋さんなんてなかったから」


 あやみとトーマ君にメールを送ると、すぐに了解メールが届いたので、愛車に乗り込み、あやみのマンションの来客用駐車場に停めさせてもらった。


 

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