第26話 3月10日 里帰り?
「おはよう、トーマ君♡」
「おはよう、あやみ」
今日もラブラブだ。
あやみが病院に出勤すると、
「トーマ君、」
カリストが少し慌てたように話し掛けてきた。
「どうしたの?」
と僕が声を掛けると、
「オリンポスから召集がかかった。詳細はまだ不明だけどね」
「えー、もうお別れなの?」
「自分の処遇がまだどうなるか分からないからちょっと怖いけど、無事にやり過ごせたら、また遊びに来るね。」
「うん、楽しみに待ってるよ」
唐突に気配が消えた。寂しい。
何か今までと違う、自分を鑑定してみるとステータスボードの最後に、分身体に10%移譲中と表示が出た。
今までカリストのおかげで神憑きの状態だったから、90%ではなく100%の状態にしてくれていたんだ。
ふっと鏡を見ると、今までの神々しさが薄れていた。
日本でトップクラスのイケメンなのは変わっていない。
前は普通にクラスで1番ブサイクだったから、全然いいのだけれど。
カリストが憑いていない状態の今、未来視を使って今後どうすればいいのか自分なりに考えてみることにした。
317日分一気に日めくりカレンダーのように視えるのに、何故か4月1日だけ日付が飛ばされてしまう。
ブースト全開にして再度4月1日だけ未来視を使って視るが、何も視えない。
何かあるのかも知れないが、カリストがいなくなった今、呼びかけても誰も返事をしてくれる者はいない。
そういえば、高校に合格したら棟梁に挨拶に行こうと思っていたのに、すっかり忘れていたな。
以前は公共交通機関を使って5時間以上かかっていたが、今なら瞬間移動ですぐだ。
里の入り口まで一瞬で飛ぶと、懐かしい光景が目の前に広がる。
一般客に公開しているさらに奥に、結界が施された入口がある。
中学1年生の夏、初めてここを訪れた時は、棟梁に、先に歩いてみろと言われ、普通に真っ直ぐ歩いていたと思ったら、しばらくして元の場所に戻っていることに気が付いた時は驚愕した。
棟梁には娘さんが2人いて、長女は英国に留学中で会ったことは無いが、次女は僕と同級生で、修行の大変さに直面していた僕に親切に指導してくれた。
懐かしい思い出に浸りながら棟梁の家の前まで来ると、少し驚いた顔をした棟梁が、
「誰だ」と言って身構えた。
「僕ですよ」
と名前を言いかけて、そういえば容姿が前と全然違うことを思い出し、瞬時に2人に和従をかけた。
何か思案中のような顔をしているので、
「トーマです。お久しぶりです。」と挨拶をすると、
「おお、よく来たな、」といつもの棟梁に戻ってくれた。
家の中に入ると、次女のカスミがクナイを持って立っていたが、僕と認識すると、顔を真っ赤にしてクナイを床に落した。
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