第15話 エースをねらって

 せっかく来たのだからと、近くの会員制テニス俱楽部でテニスをすることになった。


 お義父さんとお義母さんは大学生の頃からテニスが好きで、あやみも小さい頃から一緒にテニスをしていたおかげで、高校の大会では市でベスト16の成績だった。


 お義父さんの身体能力はいまだ高く、50歳代であやみと互角に打ち合っていた。


 今の僕なら本気を出さずに世界王者に楽に勝ててしまうが、そんなことより、大好きなあやみに少しだけ強化を施して、当時1位だった相手にリベンジしてほしい。


 偶然にも、高校生の時の全日本王者が俱楽部ハウスに到着したようだ。

 彼女はプロテニスプレーヤーになっていたが、優勝するには実力が足らず、ここをホームコートにして頑張って練習しているようだ。


 お互い顔を見ると挨拶する程度の知り合いではある。


 僕はあやみに、軽く彼女とゲームしてみなよと言うと、それを聞いた彼女、桜田プロは、不敵な笑みをこぼした。


 まあ、昔より更に実力差が開いているから勝負にならないと思っているのだろう。


 僕はあやみの手を握り、永続オールステータスアップ50%の強化魔法をかけた。


 体力、持久力、俊敏力、動体視力、思考判断にかかわる筋肉、骨、内臓、脳細胞など全身すべてが強化される。


 軽く高揚感も上がるように、手の甲にキスをして、


「頑張ってね、」と言うと、


 満面の笑顔で「頑張ってきます」と応えてくれた。


 皆が見守る中、3ゲームマッチの簡単な試合が開始された。


 初めは、強化したことに感覚が慣れるまで80%の力でいき、徐々に100%に近づけるようにアドバイスした。


 80%に抑えた1ゲーム目は、ギリギリ取られてしまったが、2ゲーム目からは100%の力で行くと、今度は何とかゲームを取り返し、3ゲーム目もそのままの勢いで取り、勝負に勝った。


 予定通り勝てた。

 2人の身体能力を瞬時に解析し、あやみをどれだけ強化すれば勝てるか算出するまで0.1秒もかかっていない。


 自分の能力にあらためて驚いていると、カリストからアドバイスで、


 このままでは相手に不思議がられるので、あやみを呼んで、点を取られたプレイの復習だと言って、自分が桜田プロのプレイを少し強めに模倣し、あやみに指導した。


 桜田プロは僕の的確な指導を見て合点がいったようで、今日は調子が良くなかった

 わ、と負け惜しみを言って自分のコートに戻っていった。


 普通にしていればそこそこ可愛いのだから応援してあげよう、と桜田プロに永続オールステータスアップ10%と自然治癒力向上20%をささやかながらかけてあげた。


 これで少しは成績も上がるだろう。


 ご両親はあやみに、


「最近テニスなどやってなかったのでは?」


 と聞いてきたが、


「トーマさんが教えるのが上手で高校の時より上達したみたい」


 と言うと、納得したようだ。


 その後軽く汗を流し、俱楽部ハウスでお茶した後、あやみの実家に戻った。


「晩ご飯用意するから泊まっていきなさい。」


「明日は私と会社に一緒に行こう。」


 とお義父さんに言われ、昼の美味しい料理以上に、夜は美味しくて豪華な食事をご馳走になった。


 まだ正式に婚約していないので、僕は客室、あやみは自分の部屋で別々に寝ようとしたが、こっそりあやみがベッドに潜り込んで来たので、おやすみのキスをほっぺにして、腕枕をして一緒に寝た。

 (天使)は寝なくて大丈夫なので、一晩中抱きしめてあげた。


 あやみをこんなにも愛おしい気持ちがあるので、種族には(天使)がついたけど、自分はまだ人間として生きていけると確信した。

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