第12話 一緒に暮らしていいの?

 ちょうど着替えて出て来た研修医さんと病院の外に出る。


「名前を聞いてなかったね」


「あやみです」


「僕はトーマ」


「トーマ様」


「様はおかしいからトーマって呼んでよ」


「はい、では、トーマ君♡」


「いい感じ、女の子に名前をこんな風に呼んでもらったことないから。」


「あやみはどこに住んでるの?」


「向かいのマンションです。」


 病院の前に立つ高級マンションだ。


「これ分譲だよね」


「はい、そうです。親がこの神成医科大学付属病院の理事もしていて近いところで購入してくれました。」


「うちなんか家族4人で3DKのアパート、この1LDKと同じくらいの広さだよ」


「では、トーマ君と私が一緒に暮らせば、問題解決ですね。」


「えっ、いいの、彼氏とか、親の決めた人とかいないの?」


「いません。よろしくお願いします。」


「じゃあ明日、引っ越してくるから、よろしくね。」


「お待ちしてます。今晩は家族で合格祝いなさるのでしょうから、名残惜しいですがいったんお帰りください。」


「魅了がまだ残っているからか、お互い見つめあうと自然と顔が近づいてきたが、理性を奮い立たせ、玄関に向かう。」


『ヒェー、初キッスになりそうで、超緊張した。各種耐性がマックスなのだが、一生彼女なんてできないと思っていたから心臓バクバク。』


『いきなりこんな可愛い彼女ができて夢のようだ、しかも一緒に暮らすことになった。昨日まで、ぼっちだったのに。』


「とりあえず、家に帰ろう。」


 瞬間移動で自宅に飛ぶ。人間界でも普通に魔法が使えて嬉しい。


「ただいま帰りました、ご心配をおかけしました。」

 

と言いつつ、家族3人に明日からあやみと暮らす記憶改編を施した。


「今日は家族水入らずの、最後の晩餐ね。」


 と母が言うと、昨日までそんなに仲良くなかった妹が、潤んだ目で、合格おめでとうの言葉と明日から寂しくなるなんて言ってきて驚いた。


 普通に楽しく食事を終え、風呂に入ったが、自分の姿を見てあまりにかっこよすぎてまた驚いた。こんなにいいことが続いていいのだろうか。

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