第6話 出逢い

 救急車で病院に運ばれたトーマは、病室のベッドの上で目が覚めた。アポロンの命令ですでにカリストはトーマに憑いている。何とか死なせずに済んだようだ。


 看護師さんは、生徒手帳を見て家に連絡してくれてから、再度様子を見に来てくれた。


「大丈夫?特に外傷が無かったから、軽い貧血か、一応検査しますか?」


「いえ、必要ありません。」

 

 目と目が合う、無言になった看護師さんが頬を赤く染める。20代前半の可愛らしい人、ドラマで見た憧れの芸能人に瓜二つ。


「どうしました?」

 

 と僕は聞いてみたが、しばらくして


「いえ、・・・。」

 

 と答えるだけ。


 不思議に思った僕は、起き上がると、看護師さんは驚いて固まってしまった。

 

 呼吸をしていないようなので、まずいと思った僕は、背中をさすり深呼吸してと耳元で囁くと、


「ヒィーッ」


 という、聞いたこともないようなひきつった呼吸をして、失神してしまった。


 そのままベッドに寝かせてあげて、僕はいたたまれなくなって、会計の方まで走ると、まだ運ばれてきただけで何もしていないので、このまま帰っていいと言われた。


 行き違いにならないように、スマホで母に連絡し、これから1人で帰れるからと伝え、人気の無い公園を見つけベンチに座った。


 第一高校から母宛に、僕が病院に搬送されたことと、高校に合格したことの連絡があったそうだ。

 

 自分に何が起きたのか整理しないと。


 合格発表の掲示板の前で、頭に手帳が乗って、手に取って届けようとして、光って失神した。

 

 相当眩しかったから、目がやられただけなのか、それとも、この得も言われぬ高揚感というか全能感は何なのか、アドレナリンが出てるだけとか。


「あーっ、誰か教えてくれー」


 カリストは、人間に憑いたことなど1度もないため、どうすれば良いのか考えていたが、ちょうど呼びかけられたので、話しかけてみた。


「教えますよー」


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