第4話 中学3年間

 トーマは高校の合格発表に来ていた。


「神様、どうか合格してますように」


 高台にあって海が僅かに見えるここ第一高校は、1学年に300人のエリートが集まる人気の高校だ。


 受験者数3000人で合格者数300人の狭き門だ。


 中学校の内申書と筆記試験、実技面接のそれぞれで高レベルな水準が求められる。

 ちなみに、毎年各分野の中学日本一が受験者の中に何人かいるそうなので、自分のような、忍賀の里 忍術試験1級合格は、英検1級合格と比べると、優位に立てるのかわからない。


 里の棟梁は、俺が中学生の時は、やっと2級に合格できた程度だったから、とやたら僕のことを褒めて来るが、そんな棟梁が一筆推薦状を書いてくれた。


 防衛省や警察に講師で呼ばれることがあるので、プラスになると言っていた。


「忍者になりたくて、中学3年間の夏休みは、ほとんど棟梁の家に住み込みでお世話になったなぁー。」

「3年生の夏休み最後の日、火遁、水遁、土遁の3つの上忍試験を突破して免許皆伝の1級をもらえて本当に良かった。」


 思い返せば中1の頃は、開店前の銭湯で風呂に潜って息止めの練習をさせてもらったり、湯を沸かす薪に火をつけてふーふーする手伝いをしたり、裏山に穴を掘って埋まり、脱出できるようになったりして、自分なりに基礎を磨いたっけ。


 学校では、水中同好会と称し、放課後 プールの底にずっと潜っていたので気味悪がられたけど、気配を消すよう努力したら何も言われなくなったなー。


 中2の夏は、里を訪れる前に読み込んだ、最新版印度式チャクラ開眼入門、や太極拳のすすめ、などのおかげで、中忍試験に合格して、


 中3の夏は、降霊術入門、とか、正しい憑依のされ方、や、北海道の時計台式魔術って何?、など多岐にわたって読み込み、8月31日、ついに上忍試験に合格した。


 合格のお祝いじゃなかったっていうのは後で知ったけど、他の里から各地の棟梁が駆けつけて、こんな暗殺者に狙われたらどうする?的な暗殺者の役を殺意を込めて演じて戦闘までしてくれて、勉強になったな。

 忍賀の棟梁は、突然の乱入で生きた心地がしなかったと言っていたが、結界を張っていた僕には、暗殺者役の人たちが息を潜めて近づいてきたことは、わかっていたので、充分対処できた。

 秘宝、全てを跳ね返す甲羅や幻影魔術など使われて、かなりてこずったけど、粘着質の蛙や蛇を召喚して何とか拘束し終えた時は、夕方になってしまい、棟梁に駅まで運転してもらって、電車に間に合った。翌日始業式だったから、さすがに焦ったね。



 2学期からは自宅で日々鍛錬を続け、苦手だった肉体の強化にも努めた。



 2月に行われた入学試験の筆記はまあまあの感触だったが、実技は室内だと危ないのでグラウンドで披露したが、火遁、水遁の術は良かったが、霧隠れの術で辺り一面霧で真っ白になってしまい、近隣の住民から苦情が来たのはご愛嬌だ。

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