君はただ受け入れればいい
一人目は相手の襟首を掴み、後ろに引き倒す。二人目が振り上げた腕を取り、引き寄せつつ投げる。三人目は足を払い、転ばせてから押さえつける。四人目が飛びかかってきたところを逆に蹴り飛ばす。五人目の頭突きをかわし、腹を殴りつけて六人目にぶつけ、七人目は膝を蹴って八人目にぶつける。九人目は背中から羽交い締めにして床に転がす。十人めには足をかけて転倒させ、その頭を掴んで他の連中に向かって投げつけた。
そうして全員を沈めた後、佐山は言った。
「やれやれ。これでは授業に出られないじゃないか」
「そっちかよ!」
と突っ込んだのは、新庄の机の横に立ってこちらを見ている金髪の少女だ。
彼女は呆れたように首を横に振った後で、新庄の方に視線を向けた。
「あんたもさあ……」
「え? え? 僕?」
「そ。アンタ」
少女は言ってから新庄の側に歩いてくる。
新庄の机の前に立つと、
「私、新庄の味方だから」
「あ、ありがと……」
「うん。じゃ」
少女は言い、新庄の返事を聞く前に歩き去った。
それから新庄は、
「……なんか、僕、あの子に助けられたような気が……」
と呟いてから、
「でも、やっぱりパンツ一枚で教室にいるのは恥ずかしいなあ……。佐山くん、僕の制服知らない? ズボンだけでも良いんだけど」
と聞いてくる。佐山は首を傾げた。
「何故だい?」
「だって女の子なのに、男の格好してるなんて変じゃない」
言われて佐山は自分のジャケットを見下ろした。確かにこれは男物だ。サイズが違うため袖は余っているし、肩幅が狭いために不自然に体が縮こまっている。しかし佐山にとっては違和感の無いものだ。
だが新庄は違う。彼女が着ているのは女物の衣服であり、サイズの合わないジャケットなど着ていればそれはおかしいだろう。
佐山は新庄に自分のジャケットを着せようと手を伸ばす。だが、そこで新庄が叫んだ。
「ちょっ!? 佐山くん!! ダメだよそれ!」
「……何がいけないんだね」
「だって、そんな、佐山くんのシャツって、女の人のものでしょ!? そんなの着たら、佐山くんまで変態扱いされちゃうよ!」
新庄の言葉に、佐山は目を細めた。彼女の言葉に何かを感じたのだ。
「新庄君。君は私のことを知っているのか?」
新庄は慌てて首を左右に振る。
「知らないよ! ただ、佐山君がそんな恰好をしてるから、きっと誤解されてるんじゃないかって思っただけで!」
その言葉を佐山は信じることにした。
「……ふむ」
佐山は新庄のブラウスに手を伸ばし、ボタンを外す。
「わあああっ! 何やってんの佐山くん!!」
新庄の叫びを無視して、佐山は新庄のベストを脱がせる。その下にはやはり白いブラウスが在り、それも外していく。新庄は身を縮めながら、
「ちょっ、ちょっと待って! 何する気なの佐山く」
「新庄君」
佐山は新庄の顔を見て、静かに言う。
「新庄君の疑問を解決しよう」
● 佐山は新庄のブラウスとスカートを脱がせた。
そして下着姿になった新庄を見る。
「う、あ、あう……」
新庄は顔を赤く染めていた。両手を胸の前で交差させて体を隠そうとするものの、細い指の間からは豊かな膨らみが見えている。
新庄の首筋から鎖骨、そして胸にかけたラインもはっきりと見えた。
「どうしたのかね新庄君。この程度で赤くなるとは」
「だ、だって! こんな状況、普通ありえないよ!!」
新庄は必死になって叫ぶが、その声はいつもより小さい。
佐山は首を傾げ、それから新庄の体を見た。
新庄の体は細く引き締まりながらも女性的な曲線を描いている。肌の色は白く、手足の先までが繊細な作りをしていた。
そして新庄の視線が、佐山の上半身に向けられる。そこには男装のために着けたサラシがある。新庄はその結び目をじっと見つめていたが、やがて、
「……あれ? あの、さっき佐山くんに着せようとした僕の上着とズボンは?」
「新庄君。これは私の趣味ではない。男としての礼儀だ」
そう言ってから佐山は自分のネクタイを解くと、新庄の手首と足首を結び始めた。
「え、あ、いや……」
困惑の声を上げる新庄に対し、佐山は淡々と作業を進める。まず新庄の手を背中側に回し、後ろ手に縛り、次に足も縛る。
「さ、佐山くん、これ、どういうこと?」
「新庄君が女だとバレた時の保険として、私も新庄君と同じ立場になる必要がある」
「ぼ、僕、別に同じじゃなくてもいいと思うんだけど」
「駄目だ。新庄君が女だという事は、他の皆には知られてはならない」
「ど、どうして?」
「もし知られた場合、私が新庄君の代わりに責任を取ることになるからだ」
佐山は言ってから新庄の手と足を更にきつく結ぶ。すると新庄は困ったように、
「そっか……」
とだけ言った。佐山は続けて、
「では、次は新庄君の番だ」
と言って、新庄の前に立つ。
佐山は新庄の姿を見て眉を上げた。
新庄の体は細い。特に腰回りが華奢であり、ウエストはベルトの上に乗っているだけだ。そしてその下、股間部分には、淡い茂みが見て取れる。
「……」
佐山は無言のまま、新庄の下半身を見下ろした。
新庄が恥ずかしがるように太腿を閉じようとする。だが佐山はそれを手で押さえて止める。
「ちょ、ちょっと待って佐山くん!」
「何故だい?」
「だって、佐山くんまでこんなことする必要ないよ!」
「私は新庄君とは違う」
「でもっ。僕たち、何もしてないし! それに、僕は男だから!」
新庄の言葉に佐山は少し考え込む。確かに彼女の言うとおりだった。今自分がしているのは、単に自分の欲望を満たすための行為に過ぎない。
だがそれでも、自分は新庄を助けようと思ったのだ。ならば、
「そうだね。ではこうしよう」
佐山は新庄の脚を開かせ、その間に座る。
「ちょ!?」
「これから私のすることを、君はただ受け入れればいい」
「そんなこと出来ないよ!」
「君に拒否する権利はない」
佐山はそう言いながら、新庄の胸に触れた。
「あ」
思わず声を上げてしまう新庄。
佐山は手を止めず、ゆっくりと新庄の乳房に触れる。
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