第4話 万雷晩餐<改>
『酒だー!』
「メシを食う集まりだよっ」
『うまいな。』
クッキーに群がった小人で山ができている。
「ここにも置くぞー」
子供達に合格をもらえなかった出来栄えのクッキーも、味は問題ない。
見た目より、量の奴らが集まっちまった。
『うるさいの。』
撫然とした態度の梟も、なんとなく機嫌の良さが滲み出る。
こんなに一堂に会する機会ってないのかもな。
酒を持ち込み、出した食事を肴に。
声が雷のように落ちては、わっと騒ぐがそんじょそこらで広がっている。
「どんだけいるんだよ」
精霊獣、妖精達ってこんだけいるんだな。数人しか見かけない。隠れることのが多い妖精達。精霊獣は個人主義。
大喰いのやつ用に丼物に肉を。
味は同じ甘辛だが、肉の種類は個々で違う。
串焼きも追加だ。
俺も酒を飲む。後はあるだけでやってくれ。
腹が膨れ、再会を喜びあった後は昔話に花が咲く。
「ほんとに花が咲いてら。」
そんな不思議な空間を眺めながら、今日出来上がった品を見る。
焼き印を作ってもらい、聖霊の姿をシルエットでデザインした。
シンプルなハーブクッキーは梟の胸元が刻まれ、ほろ苦チョコレートはコウモリのような翼を影のように刻みつける。
俺はやっと自分の番だ。
丼物の頂点に置かれた、輝く木の実は伝説の盾の魔石のように輝きを放つのだが、最初に食われちまう。俺は後で食う派だ、周りの肉から食った。
酒が入り、轟くような騒ぎだ。
「体に悪くないなら良っか。」
精霊も妖精達に酒の飲み過ぎはないらしい。
もう一度刻印を見る。羽、葉っぱ?のような刻印は、俺の店のマーク。
近々、ギルドの近くで店を持つことになった。メシが好評だと試験期間の時は聞いたんだが、<菓子屋><精霊の祝福>って噂になっている。
『何屋だ?』
「メシ屋だよ。」
アンタが食べている!丼物を出す店だ。
盛り付けにもこだわれって、ゴテゴテ飾るのは面倒だし性に合わねえ!
とりあえず3種類。
<赤い魔牛の盾>
ガツンとニンニク、三段に丸く肉が乗る丼物はゴツくてシンプルな盾
中央の飾りをイメージしての赤い野菜を添える。
<雷玉のシールド>
黄色は鮮やかに、さっぱり鳥だがタレで食う。プリリと艶のある肉が、傘を広げたみっちりとつまるが軽々食える。
物足りないやつは肉串を買え!
<緑の双翼の守り>
ひと口肉の丼物だが、2種類の肉を乗せる。その下にはシャキシャキの野菜たち。
肉だけで良い?このサイコーの組み合わせ、信頼のコンビを味わってから文句を言ってみろ!
『剣はないんだな。』
「体を守る食事だからな」
冒険者が多いから、量は絶対。
「色が茶色で可愛くない」
「肉なんだからしょーがないだろ。」
そう子供に答えたものの、ちょいと工夫した。
この食事はご褒美でもあって、明日への活力だ。身を守る武器であり、頑張った先に得られる宝のように。
ガッツリの肉、その中央に色を添えた。
赤、黄色、緑。
「それぞれの宝玉だ。」
宝飾のように中央に置かれた色が、おしゃれだと見た目にもオッケーが出た。盾、シールドのようでかっこいいだと。
それで店の名前に良いのはあるか聞いたら、<精霊姿のお菓子屋さん>?
「クッキーは気に入ったみたいだがよ。」
あの孤児院の子供達が作って、クッキーは補給していく。売上は孤児院へ。
「たいした手間じゃないからな。」
俺は肉に専念できるし、レシピは提供して売る場所は俺の店か孤児院でのバザーのみ。
『お布施とは感心感心。この羽を店に掲げるとは、なかなかの忠臣だ』
梟が翼を広げるが、似てるか?
『森の葉っぱ!』
「まあ、そっちのが似てるよな。」
店のシンボルになるようにと注文したが、これはなんなんだ?
世界樹の葉、メシを包むパルプの葉?
「なんでもいいや。」
<精霊姿の丼物屋>
が一番定着したか。土産用のクッキーは小腹が空いた時用や酒の肴に好評だ。
そのクッキーは、精霊の加護があるとかないとか。
妖精に好かれるクッキーだとか。
そんな話が出回ってるよ。
<精霊姿のお菓子屋さん>と名付けられました。飯も作るんだけど? BBやっこ @BByakko
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます