第7話

眠気。睡魔。副作用。目眩。




暗転。







  『Teen Grave』7話






「嗜好品だらけで贅沢なもんだな」

「だってそれが無いと」

「煙草は」

「あのクラっと来る感じもダウナー感も薬じゃ味わえない」

「酒」

「酒はそんなに飲んでないだろ」

「じゃあモンスターエナジーは」

「…薬の副作用で起きてられないんだ」


そう。薬。

たった1週間の閉鎖病棟への入院を経て、薬選びが良くなったんだか悪くなったんだかよくわからない。

ジアゼパムにエビリファイ、コントミン、トリンテリックスにブロナンセリン…

もはや何がどう作用してるかもわからない。

そして恐ろしいのは薬が無くなることだ。

引越しを繰り返す僕は病院を転々としている。

確実に、診療情報提供書ーー所謂、病院の紹介状が間に合わない。

薬が切れた時どんな副反応が起きるのだろう。


「薬選びって難しいよな。医者は案外こっちの言う通りに処方してくれるけど」

「でもどんな薬であれ、この量じゃあ…」

「減薬」

「え」

その言葉にびくりと反応する。

だって。元々薬物依存症だった僕が。

薬のおかげで安定出来ていたのに。

「分かってるよ。でもこのままじゃいけないって思ってるだろ?」

「でも薬で安定出来ているのに無理に抜けないだろ」

それもそうなんだよな、とコイロは首を捻る。

「いーんだよ、ありのままの自分で〜」

横から口を挟んできたのはカプだった。

「だってそれが貴方なんだもの。」

そうは言ってもいつまでも薬を飲んでいるわけには 。

『きっといつか安定できるよ』

「あの娘もそう言ってくれたでしょ?」

でも。

「変われないよ」

「え」

「そんなすぐに人間、変われないんだよ。」

それもそうか。


そうやって惰性で生きていくんだろうか。

向精神薬を飲みながらまともに働いている大人はどれだけ世の中にいるんだろうか。


病魔はいつ消えるのか。

何度メガホン越しに叫んでも消えてくれない。

「ねえ」

「病魔ってなあに?」

「俺にもわかんねえよ」

僕もだ。


「惰性で生きてるお前自身なんじゃねえの?」


知らない。






わからない。

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