第4話

AM 2時。

あんだけ眠剤飲んでても、よく眠れない夜もあるもんだ。


「ふう…」


ラッキーストライク・チルベリー8mg。

一服どころ二服はしている。



暗転。




  『Teen Grave』4話




「どうしてくれる」

「元カノちゃんが吸ってた銘柄は美味えかい」


成人してからというものの一日5本以上は吸っている。

というよりこれ、喫煙初日時点での本数である。

これじゃ、既に。


「僕、お前と一緒じゃねえか」

「まあここは十也、お前の精神世界だからな。」

「タバコが苦手でいつもむせていた僕が、僕が、お前の影響で、ついに、」

「俺の銘柄はブラックデビル・カカオ。全然俺関係ないと思うんだけど?」


はい、最もです。

薬物依存・ニコチン依存・恋愛依存って、考えてみれば随分と最悪なセットだな。


「でもいいじゃない~、そうやって愛する人を感じてるんでしょ?」

「あれは関係ねーよ!ただ教えtもらった味が吸いやすかったから、それだけだよ」


思わず声を荒げる。だってあれは終わった事なのだ。



恋愛依存症のこいつにはわからんだろうが、僕には意外なことに未練なんかないんだ。

境界性パーソナリティー障害、愛着障害。人への依存心が強かったあの僕が、だ。


「それが本当の"愛情"なんじゃないのかなあ」

「え?」

「だってやっと見つけたでしょ?見返りを求めない愛。

 そう、10台の頃なんかは貴方、周りにお前は恋愛なんかするなって言われてたじゃない」



そうだ、そういえば。

7年間片思いしてた女には、ストーカー気質すぎて我ながら大変だったものだ。

当然最後は試し行為が激しすぎて縁を切られる、恒例のパターンだったのだが。


「でも僕はもうあの子を愛していない。未練も無いことがその証拠だろ?付きまとう気もない。」

「そうかな」

「いや、だから付きまとったり試したりしないって」

「そうじゃなくて、さ」


彼女はそっと、僕の唇に指を添える。


「まだ貴方の身体には、残ってるんだよ、チルベリーの香りは格別だね」

「どうだかな」


「別に無理に諦めなくていいんだよ。」

「見返りを求めない、無理に追わない。拒絶されたって構わない。」

それが本当の愛情だよ。



「やっとお前の"ボーダーライン"も官界しつつあるってとこか?:

境界性パーソナリティー障害。通称、ボーダー。


「でも結局20代の手前、問題行動は起こしちゃったからなあ」

「まあ、いいんじゃねえの。お前は愛した人にはそれが向かなかった」


僕とはまた別の銘柄を吸いながら、べらべらと口を挟んでくる。甘いカカオの香りは食欲をもそそられる。



「何はともあれ貴方は愛を貫き通したんだと思うよ?」

「それならいいけど、なあ」



いい加減、2箱目は銘柄変えよ。

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