Ⅱ-5

 エリコが土産を抱えて大阪から戻ってきた。豚まんと餃子。

「たこ焼きとかお好み焼きは、向こうで食べた方がおいしいから」

 エリコは僕が焼いた餃子をつまみながらビールを飲んでいる。この時期はキンキンに冷えたビールがいいとエリコが言う。大阪でたっぷりとストレスを解消してきたようだ。エリコにストレスなんてないと思っていたけど、帰ってきたエリコの表情は以前よりもずっと生き生きしている。

「ねえ、大阪でしか売ってないビールとかないの」

「ないけど、カップのうどんはそのうち箱で届く」

「関西風の」

「そう関西風のうどん」

「ポン酢は」

「忘れた。送ってもらう。でもあのポン酢はみんなこっちでも買えると思ってる」

 関西弁のイントネーションが残っているからだろうか。エリコがいつもと少し違って見えた。こっちの言葉で話すこともストレスになっていたんだろうか。

「なんであたしが大阪から来たってわかった」

「ただの勘違いだよ」

「ほんまに」

 エリコとこんな話をしていたら、久しぶりに大阪に行ってみたくなった。いつのまにか盆の休みが終わろうとしている。

「明日から仕事だね」僕はコップに残っていたビールを飲みほした。

「そやね」エリコがため息をついた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る