第39話 短い青春

 春にはお花見……


「いやぁ、やっぱ桜はいいねぇ。春が来たって感じじゃん」


「ほー、お前にそんな良さがわかるとは……」


「うるさいっ!子、お前も桜のようにおしとやかになりなさい」


 女子チームはお弁当、男子チームは飲み物、お菓子を用意した。

 國枝彩希さきねぇが作ったお弁当は、お稲荷さんや唐揚げなど、皆が大好きなもので詰まっていた。


「うぉ、やっぱ菜々花の卵焼きは美味いなぁ!」


「えへへ、だろ?」

 関瑠羽太るぅちゃんに褒められて、上機嫌な九条菜々花ボク


「なあ、皆で写真撮って貰おうぜ!」


 隣で宴会をしている男性にお願いして、集合写真を撮ってもらった。


「いきますよー。はい、チーズ」


 この写真は、皆の待ち受けになっている。


 夏には海……


「あちぃっ!砂浜やべぇわ」


「まあ、とりあえず女子を待つべ」


 男子達は、砂浜で女子達ボク達がどんな水着を着てくるのか、じーっと待った。

 着替えを終えた女子達が、こちらへ向かってくるのが見えた。


「おいおい!桃子の水着の生地、少なすぎだろ!ポロリあるぞ、ポロリ!」


「千春先輩も隠れ巨乳じゃんっ!」


「彩希先輩は思った通りだ!美し過ぎるぅ!……てか、パレオ落ちろ」


「おい、やめろ」

 乙羽野おとわのキリトは眉をひそめた。


「あれ?ひとり小学生がいるな……」


「おい、やめろ」

 関瑠羽太せきるうたは眉をひそめた。


 思春期真っ盛りの男子達は、体育座りから動けなくなっていた……。


「おい、継治……海パンの上から出てんぞ!どんだけデカいんだよ!お前ら、見てみろ!」


「や、やめてよ……!」


「おう、お前らお待たせ〜。なんだ?皆で体育座りなんかして……さあ、海入ろうぜ。」


「……あのな、オレ達全員……その、あの……でまだ動けないんだ。先に行ってくれ……」


「……うわっ!キモっ!女子、みんな逃げろー!」



 秋には河原でバーベキュー


 この季節は、心地良い風が優しく吹いて気持ちが良い。川のせせらぎもまるでクラシックを聴いているようで心が洗われる。


「よーし、焼けたぞ。どんどん食え!」


 こういう時は、大体瑠羽太が率先して動く。それを継治がサポートする。


「あら、美味しい。柔らかいお肉ね」


「でしょ?彩希先輩。ハラミっすよ。」


「おい、足りねーぞ。どんどん焼けじゃん」


「ちっ、うるせー!お前は野菜ばかり食べてろ!」


 瑠羽太が、琉空に空のペットボトルを投げつける。

「痛ってぇ!コノヤロッ!」


 皆、こういうやり取りが楽しくて仕方がなかった。8人でいると笑顔が絶えない。



 そして冬……


 粉雪の舞う街へ、皆でパーティー用のクリスマスケーキを買いに行った時に、誰かが言った……


「なあ……オレ達この先ずーっと仲良しでいような。ジジイ、ババアになっても一緒にお茶でも飲んでさ」


「もちろん!」


 皆、笑顔でハイタッチしたのを覚えている。



 それが……


 まさか……


 パズルのピースが欠けるなんて、誰もが思ってもみないことだった……


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