第38話 ボク達の出会い

 およそ1年半ほど前……


 あの日は穏やかな風が吹き、抜けるような青空だった。


「ねえ、るぅちゃん。同じクラスになれて良かったね」

 ボクは、るぅちゃんと同じクラスになり、ニコニコだった。


「お、おう。……でもあんまり話し掛けんなよ。女連れだと思われて、初日から舐められると嫌だからよぉ……」

 るぅちゃんは、意外と緊張するタイプでオドオドしていた。


 そこへひとり騒がしい男が声を掛けてきた。


「こんちゃーす!俺は天音琉空あまねりく。これからヨロシクじゃん」


「お、おうよ。オレは、関瑠羽太せきるうただ。ヨロシクな」


 るぅちゃんは、自分のイカつい見た目にも臆せずに、話し掛けてきた琉空ちゃんと直ぐに仲良くなった。


 るぅちゃんに、話し掛けるなと言われたボクは、ひとりドギマギしていた。


「よう!ウチは神山桃子。おチビちゃんは?」


「あ、えっと、ボクは九条菜々花……です」


「おー!か!初めてお目にかかったわ、まじで。よろしくな、菜々花」


 ボクは、目の前にある桃ちゃんの弾けるような胸に驚いた。


「うわぁ、桃ちゃんおっぱいデカいねぇ!羨ましいぞぉ……」


「ハッハッハ……そうだろ?!ちょっと触ってみるか?」


「わーい!」


 るぅちゃんと琉空ちゃんは、桃ちゃん(の胸)を見て見ぬふりをして……もちろん、見ていた。


 こんな感じで、ボク達はすぐに打ち解けた。


 お昼休みに、この4人で学食のテラス席へ行った。

 ひとりの男子生徒が、6人掛けの席に座っていた。


 桃ちゃんとボクは、違う席を探そうと辺りをキョロキョロしてみたが、どこも満席だった。


「おう。悪ぃけど、相席してもいいか?」


 るぅちゃんが声を掛けると、その男子生徒は驚いて立ち上がった。


「すす、すみません!い、い、今すぐ空けます!」


 それが、伊集院継治つぎちゃんだった。


「あ、そうじゃなくて相席したいんだわ、まじで」


 そう桃ちゃんに言われると、継ちゃんは益々焦りを募らせた。

 慌てふためき、手に取ったノートパソコンが床に落下した。


「おっと!」


 それを、床スレスレで華麗にキャッチしたのが、乙羽野キリトキリちゃんだった。


「丁度6人だね。オレも相席してもいいかな?」


 キリちゃんは、そう言って微笑みながら眼鏡を人差し指で直した。


 まるで、俳優のような出で立ちのキリちゃんは、初日から沢山の女子の心を奪った。

(因みに、本人キリちゃんは鈍感なので全く気付いていない)


 こうしてボク達6人は、このテラス席で仲良くなった。


 更に……


「よう、桃子。もう友達出来たのか?」


「お、千春ちはる!皆、ウチの姉貴だ。よろしく頼む!まじで」


 そして、神山千春ちぃちゃんの隣にいたのは……なんと!


「あっ!彩希姉ぇ!!」


 るぅちゃんとボクが、後を追って入学した憧れの先輩ヒト國枝彩希さきねぇだった。

 彩希姉ぇは、ボク達が幼い時から遊ん貰っている優しいお姉さん的な存在なのだ。


 ボクは、人目もはばからず彩希姉ぇに抱きついた。

 昔から変わらない……とても温かくて、甘いミルクの香りがする。



「いやぁ、まさか彩希先輩と桃子のお姉さんが友達とはね……」



 見た目も、性格も、バラバラな8人……

 ボク達は、まるで不揃ふぞろいなピースがピタリとはまったパズルように、ひとつとなった。


 菜々花は毎日学校へ行くのが楽しくて仕方がなかったのを思い出していた。


 ボク達8人は、何をするにも一緒だった。


 




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