第28話 既読
神山姉妹を除いた、
カサカサと舞った枯れ葉が
ボクは、俯き加減で蚊の鳴くような声を絞り出した。
「ボクのせいだ……あの時動画なんて撮ったから……それを皆に見せたりしたから……」
「それは違うよ……だったら菜々花を直接狙うはずだろ?」
「そうじゃん、動画は関係ない、きっと……無差別とかじゃん?……な?」
「うん、ぼ、僕もそう思うよ……」
しかし、ボクはそんな風には思えない。只々、自分自身を責めた。
少し離れて電話をしていた
「桃ちゃんのお父さまに連絡がついたわ。
「じゃあ、落ち着いたら皆で桃子に会いに行こうぜ。線香あげさせてもらおう」
全員いっぱいいっぱいだった。普通に
悲しみ、恐怖、憎悪、一気に押し寄せる感情の波を制御しきれる者は、誰一人もいなかった。
ボク達の周りには、はしゃぐ子供たち、散歩を楽しむ老人、井戸端会議の主婦たち、いつもと変わらぬ何気ない風景がやけに詫びしく見えた。
ボク達の日常は……もう、戻らない。
帰宅後、ボクは父のスマートフォンを使い、グルコミュを開いた。
皆、平常を保とうと、今やってるバラエティ番組がどうとか、C組の誰々が誰と付き合ってるとか、何気ないチャットをしている。
ボクは参加する気力もなく、ただベッドに転がるだけだ。
食事もしない、お風呂にも入らない、窓から差し込む西日を見つめ、桃ちゃんのことを考える。
桃ちゃんと過ごす普通の日常がどれほど大きかったか、大切な時間だったか……
桃ちゃんは、どれだけ苦しい思いをしたのか……
どれだけ痛い思いをしたのか……
そして、どれだけ悔しかったことか……。
桃ちゃんは、ボクの1番の親友だった。
入学してすぐ、オロオロしているボクに話しかけてくれたのが桃ちゃんだった。
「よう!ウチは神山桃子。おチビちゃんは?」
「あ、えっと、ボクは九条菜々花……です」
「おー!ボクっ娘か!初めてお目にかかったわ、まじで。よろしくな、菜々花」
その日から、ボク達は毎日のように一緒だった。
2年生になり、クラスは離れたが、休み時間の度にどちらかがそっちの教室へお邪魔して女子トークに花を咲かせた。
休日も2人で遊ぶことが多かった。
電車で都会の方へ行き、有名コーヒーショップの新作を飲んだり、手が届かないような高級ブランドのお店を見たり、好きな俳優が主演する映画を観たり……思い出は語り尽くせないほどある。
(ボクはこうして悲しんでるだけ、ボクには何も出来ない……いや、何もしてないだけか……桃ちゃんの為に何か出来ないか?……いや、しなくては!桃ちゃんに笑われる……逆に悲しませてしまう)
(とにかく動こう……何かボクにも出来ることがあるはずだ……皆が言うにボクは鼻が利くらしい……考えろ、考えるんだ……!!)
ボクはガバッと起き上がると、パパに借りたスマホを手に取った。
(もし犯人が、まだボクのスマホを持っているとしたら?……イチかバチか……)
スマホの画面をスワイプさせ、自分の個チャを開いた。素早く文字を打ち込む。
『ボクは菜々花だ。ボクのスマホを持っているキミは犯人なのかい?』
(頼む……既読よ付け……反応してくれ……)
間もなくパッと既読が付いた。
(よしっ!来たっ!……返信してこい……)
『こんにちは、菜々花。そうだよ、私がDr.ペストだ』
(!!……かかった!)
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