第25話 帰宅
「ただいま〜。雨でびしょ濡れ〜、お母さん、タオル持ってきて」
母はスリッパをパタパタさせ大きめのタオルを持ってきた。
「おかえり千春。遅かったね」
「うん、まあね……」
千春は頭を拭きながら足元をチラチラと見た。
「あれ?……ア、アイツは?靴、ないけど……」
「桃子ならまだ帰ってないよ。なあに?珍しく気にして……仲直りでもしたの?」
母は嬉しそうにニヤついた。
「……いや、仲直りした……というか、これから……みたいな?……」
千春は言葉を濁すとダイニングへ行き、テーブルに並んだ夕食の唐揚げをつまみ食いした。
時計の針の音がやけに耳障りだ。
千春は、観もしないバラエティ番組をつけて気を紛らわせた。
どれくらい経っただろうか、玄関のインターホンが鳴った。
千春は足早に玄関へ行くとドアを開けた。
……誰もいない?
ふと、足元にメロンが入るほどの大きさの箱が目に入った。
千春は、箱を手に取ると母のいるリビングへと運んだ。
「お母さん、何か届いたよ。……やけに重いな」
箱はずっしりと重く、千春の両肘が伸びる程だった。
「え?私は何も頼んでないわよ。桃子じゃないの?」
千春は、送り状を確認する……が、宛先は貼ってすらなかった。
「あれ?なんだろ、これ?開けてみてもいい?」
千春は、箱の蓋をとめているガムテープを乱雑に剥がした。
「……え?……な、何?こ……れ……」
箱の中身を認識するのに、数秒かかった。
そして……まるで地震のような眩暈が、千春を襲った。
全身の毛穴が一気に開いた。
「いやああああっ!!」
千春は、ガクガクと膝から崩れ落ちた。
驚いた母が駆け寄る。
「どうしたの千春!?」
母は、真っ青な顔で震える千春を支えると、箱の中身を確認した。
!!!
「きゃああああっ!!」
母は、その場で卒倒し気を失った。
箱の中には……桃子がいた。
苦痛の表情を浮かべ、目じりには涙の痕があった。
「ななな、なんで?なんで?……うう、うわああああんっ」
千春の叫び声は、家の外まで響きわたった。
その直後、インターホンが鳴り玄関のドアが開いた。
「ち、千春先輩、どうしたんですか?」
飛び込んできた
「りりり、琉空ぅぅ、もも、桃子がぁぁぁ……」
クシャクシャの涙顔をした千春は、震える指で箱を指さした。
「箱……?」
琉空は、膝まづいたままテーブルの上にある箱に手をかけた。
しかし、あまりの重さに中身を落としてしまう。
ごろり……
琉空は、床に転げ落ちた桃子と目が合った。
「え?……う、うわああああっ!……も、桃子ぉぉ!!」
閑静な住宅街にサイレンが響き渡った。
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