第23話 解せない結末

 学校の外へ出ると、皆 何にも例えようのない気持ちになっていた。

 外の寒さと相まって、疲れも酷く増していった。

 天音琉空あまねりくのおチャラけも出ない。


 そんな中、乙羽野おとわのキリトが口を開いた。


「皆、疲れているだろうけど少し話をしていかないか?たぶん、で考えるより、になって考えた方が気が楽だと思うんだ」

 キリちゃんの言葉に、皆 同意した。


 まずは雰囲気を変えようと、街まで足を延ばし、ファミレスでドリンクバーとフライドポテトを注文した。明るい照明と賑やかな店内に少し気が紛れた。


 ポテトを口に頬張ると、琉空ちゃんが話し始めた。


「あのさ、黒崎刑事だけど……ぶっちゃけあのタイミングで登場して、銃ぶっぱなすって……さすがに怪しいじゃん?」


「確かにな。的な……」


 キリちゃんも、他の皆も同じことを思っていた。


「菜々花、お前の勘はどう感じている?」


 神山桃子桃ちゃんが、ストローを咥えながら、ボクの洞察力に問うた。


「ちょっと待って……よし、これで大丈夫ぅ」


 ボクは、彩希姉ぇの首の傷に花柄の絆創膏を貼り終えると、自分なりの意見を述べた。


「うーん……確かに話の辻褄つじつまは合うけどぉ……美井先輩の言っていたように、ボク達はされたしね。でも、あくまでボク達と同じの域は出ないと思う。証拠も無いしさ。それに、あんな小説やドラマのような出来事を体験したから、黒崎刑事の事も怖く感じただけかもだしぃ。但し、もしもこの事で事件が解決です……となったら、限りなく黒に近いグレーかなぁ……」


 ボクは、口を尖らせて首を横に傾けた。


「なるほど。動画は消した、犯人は仕立てあげた、死人に口なし……ってことか」

 キリちゃんが、人差し指で眼鏡をなおした。


「でも、のことはどうなるんだよ?おかしいべ?」


「それな……」


 関瑠羽太るぅちゃんが確信に触れると、桃ちゃんが頷いた。


「もう動画スマホが無いから証拠無しだよ。ボクの見間違いと言われたらそれまでだし……」


 ボクは、責められているように感じ、小声で答えた。


「それを言ったら徳山先生がスマホいじってたら、まるで呼び出されたかのようなタイミングで、美井が現れたぞ……」


 神山千春ちぃちゃんの言葉に、益々混乱する一同だった。


 ピロリン♬


 その時グルコミュの着信音が鳴った。


 スマホの無いボク以外の皆が確認すると、


『先程は驚かせてすまなかったね。もっと皆に気配り出来れば良かった……警察としては、この件は解決になりそうだよ。けど、僕個人としてはまだ何か引っかかる。また何かあったら頼ってくれ』


 皆、固まった。


「うーん、黒崎刑事犯人じゃなくね?もしかしてただの良い人?」


 ちぃちゃんが苦笑いした。


「まあ、何にしろ証拠のスマホも無いし、警察的には美井先輩がDr.ペスト、これ以上ヤツが犯行を起こす可能性は低いだろう。但し、顔を知られている菜々花と瑠羽太は充分に注意してくれ」


 キリちゃんの言葉は、皆の不安を少し取り除いた。


 しかし、ボクは何か得体の知れぬ不安に飲み込まれていた。


「よーし、仕切り直しだ!……また明日、いつものオープンテラスで!」

 るぅちゃんの締めで、長い一日が終わりを告げた。

 皆、気持ちを切り替えて笑顔で手を振り合った。


 Dr.ペスト事件は、真相不明のまま解決となった。


 ……かと、ボク達は思っていた。


 しかし、事件は解決するどころか、加速してゆく……


 翌日のニュースで「されたポメラニアンが保護」と、報道されるのだ……


 そして……この8で集まるのは……今夜が最後となった。



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